判旨
融通手形の振出人は、その手形が第三者の所持に帰した場合、当該第三者からの手形金請求に対し、融通手形であることを理由として支払を拒むことはできない。
問題の所在(論点)
融通手形の振出人は、手形を取得した第三者に対し、融通手形であることを理由に支払を拒絶できるか(人的抗弁の切断)。
規範
融通手形であっても、振出人がこれを振り出し、第三者の所持に帰した場合には、手形外の人的抗弁としての融通関係は第三者に対抗できず、振出人は支払義務を負う。
重要事実
上告人は、いわゆる融通手形を振り出した。当該手形は第三者の所持に帰し、所持人から上告人に対して手形金の請求がなされたが、上告人は融通手形であることを理由に支払を拒絶した。
あてはめ
本件手形は上告人が振り出したものであり、第三者である所持人の手に渡っている。融通手形は、被融通者の資金調達を目的として振り出されるものであるから、その趣旨に照らし、第三者の手に渡った以上、振出人は無対価であることを理由とする抗弁を所持人に対して主張することは許されないと解される。
結論
融通手形の振出人は、第三者の所持人からの請求に対し、融通手形であることを理由として支払を拒めない。
実務上の射程
手形法上の抗弁制限の原則を確認したものである。実務上、融通手形であることを知って取得した悪意の第三者に対しても、特段の事情がない限り抗弁を対抗できないとする通説・判例の法理(悪意であっても害意がなければ対抗不可)を支える基礎的な判示として引用される。
事件番号: 昭和31(オ)622 / 裁判年月日: 昭和34年7月14日 / 結論: 棄却
いわゆる融通手形の振出人は、直接被融通者から手形金の支払を請求された場合に支払を拒絶できるのは格別、被融通者以外の所持人に対しては、特段の事情のないかぎり、その者が融通手形であることを知つていたと否とを問わず、その支払を拒絶することはできない。