銀行が、就業規則を変更し、完全週休二日制を実施する一方で、平日の所定労働時間を毎週最初の日及び毎月二五日から月末までは六〇分間、その他は一〇分間延長した場合において、平日の所定労働時間の延長は労働条件を不利益に変更するものであるが,右就業規則の変更により年間所定労働時間は相当減少し休日が増加するから、従業員の被る不利益は全体的、実質的にみて必ずしも大きいものではなく、他方、右銀行にとって避けて通ることができなかった完全週休二日制を実施するためには平日の所定労働時間を画一的に延長する経営上の必要性があり、右変更後の所定労働時間は当時の我が国の水準としては必ずしも長時間ではないなど判示の事情の下では、右変更は、合理的内容のものであり,これに同意しない従業員に対しても効力を生ずる。
完全週休二日制の実施に伴い平日の所定労働時間を一〇分間ないし六〇分間延長する就業規則の変更が有効とされた事例
労働基準法(平成10年法律第112号による改正前のもの)89条1項,労働基準法93条
判旨
就業規則の変更により労働者に不利益をもたらす場合であっても、当該変更に合理性が認められる限り、同意しない労働者に対してもその効力は及ぶ。合理性の判断は、不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、代償措置、労働組合等との交渉経過等を総合考慮して決せられる。
問題の所在(論点)
労働者の同意がない就業規則の不利益変更が、当該労働者を拘束するための「合理性」の有無が、労働時間の延長と週休二日制の利益をどう比較衡量して判断されるか。
規範
就業規則の変更が、労働者の被る不利益の程度、利用者側の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合や他の従業員の対応、同種事項に関するわが国社会における一般的状況等を総合考慮し、不利益を労働者に受忍させるのがやむを得ない程度の必要性がある合理的なものである場合には、個々の労働者の同意がなくても拘束力を有する。
重要事実
銀行である被告(上告人)は、政府の週休二日制推進方針や施行令改正を受け、完全週休二日制を導入した。これに伴い、特定の平日(特定日)の所定労働時間を60分、その他の平日を10分延長する就業規則の変更(本件変更)を行った。多数派組合(労組)は同意したが、少数派組合(従組)に属する原告ら(被上告人ら)は、特定日の労働時間延長や時間外手当の減少を理由に反対し、従前の規則に基づき算定した未払手当等を請求した。
あてはめ
不利益の程度に関し、特定日の60分延長は大きいが、年単位では所定労働時間が42時間短縮され、時間当たり賃金は増加している。また、週休二日制による連続休日の確保は労働者にとって大きな利益であり、全体的な不利益は必ずしも大きくない。変更の必要性については、銀行法上の休日改正への対応や、他行との競争力維持のために労働量減少を補う必要性が認められる。内容の相当性も、当時の我が国の水準や他行の状況に比して妥当である。以上から、不利益を受忍させるのがやむを得ない程度の合理性があるといえる。
結論
本件就業規則の変更は合理的であり、同意しない原告らに対しても効力を生じる。したがって、変更後の規則に基づく手当の支払は適法であり、原告らの請求は棄却される。
実務上の射程
不利益変更の合理性判断におけるリーディングケース。特に「不利益」を一部の条件悪化(日単位の延長)だけでなく、制度全体(年間の労働時間短縮や休日の増加)を総合して「実質的」に判断する手法を示しており、答案上も不利益と利益を相殺的に評価する際の論拠となる。
事件番号: 平成9(オ)1710 / 裁判年月日: 平成12年9月12日
【結論(判旨の要点)】就業規則の変更により労働者に不利益を及ぼす場合であっても、当該変更が、不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、代償措置の有無、労働組合等との交渉経緯等に照らし、合理的なものであるときは、同意しない労働者も拘束される。本件の平日の労働時間延長は、週休二日制の実施による休日増という大きな利益を伴うも…
事件番号: 平成30(受)1519 / 裁判年月日: 令和2年10月15日 / 結論: 棄却
郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して有給休暇である夏期休暇及び冬期休暇を与える一方で,郵便の業務を担当する時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれを与えないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1)~(3)な…