甲及び乙の共有に属する借地権とその地上建物の分割をする場合において、右借地権等が甲に遺贈され、乙がこれに対して遺留分減殺請求権を行使した結果、共有関係が発生したものである上、六分の一の持分を有するにすぎない乙が競売による分割を提案しているのに対し、六分の五の持分を有する甲は、今後も右建物に居住することを希望し、自らがこれを単独で取得するいわゆる全面的価格賠償の方法による分割を提案しているところ、右借地権の存続期間などの事情によっては、必ずしも右借地権等を甲に取得させるのが相当でないとはいえず、また、甲の支払能力次第では、右借地権等の適正な評価額に従って乙にその持分の対価を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないにもかかわらず、全面的価格賠償の方法により共有物を分割することの許される特段の事情の存否について審理判断することなく、直ちに競売による分割をすべきものとした原審の判断には、違法がある。
いわゆる全面的価格賠償の方法により共有物を分割することの許される特段の事情の存否について審理判断することなく競売による分割をすべきものとした原審の判断に違法があるとされた事例
民法258条,民法264条
判旨
共有物分割において、共有物の性質や利用状況等の諸事情を総合考慮し、特定の者に取得させることが相当で、かつ適正な評価による支払能力が認められ、実質的公平を害さない特段の事情がある場合には、全面的価格賠償による分割も許される。
問題の所在(論点)
民法258条の共有物分割において、現物を分割せず、特定の共有者に目的物を取得させた上で他の共有者に金銭を支払わせる「全面的価格賠償」の方法が認められるか。
規範
民法258条に基づく共有物分割において、①共有物の性質・形状、②共有関係の発生原因、③持分割合、④利用状況、⑤分割後の経済的価値、⑥共有者の希望等の諸事情を総合考慮し、特定の者に取得させることが相当と認められ、かつ、価格が適正に評価され、取得者に支払能力があって、他の共有者に持分の対価を取得させても実質的公平を害さないという「特段の事情」があるときは、全面的価格賠償による分割が許される。
重要事実
上告人(持分6分の5)と被上告人(持分6分の1)は、父からの遺贈および遺留分減殺請求を経て、本件借地権等を共有した。上告人は長年居住を継続しており単独取得と価格賠償を希望したが、被上告人は競売を主張。原審は、全面的価格賠償は許されないとして競売を命じたため、上告人が上告した。
あてはめ
本件では、上告人が過半数を大きく超える持分(6分の5)を有し、現に居住を継続して単独取得を希望している。対する被上告人の持分は僅少(6分の1)である。本件借地権等の適正な評価がなされ、上告人に十分な支払能力が認められるのであれば、上告人に取得させ対価を支払わせることは共有者間の実質的公平を害さず、全面的価格賠償を認める「特段の事情」が認められる余地がある。
結論
全面的価格賠償を認める余地がある。原審がその特段の事情の存否を審理せずに直ちに競売による分割を命じた判断には、法令の解釈適用の誤りがある。
実務上の射程
共有物分割の訴えにおける判断枠組みとして必須。原則は現物分割、例外として(旧法下の判例法理だが)全面的価格賠償を認める。令和3年民法改正(258条2項2号)により本判決の法理は明文化されたため、現在でもその考慮要素(特段の事情の具体的内容)は答案上のあてはめ指標として極めて重要である。
事件番号: 平成7(オ)1684 / 裁判年月日: 平成10年2月27日 / 結論: 破棄差戻
一 共有不動産の分割をする場合において、共有者の一人である甲が今後も右不動産に居住することを希望しており、また、合計六分の一の持分を有するにすぎない乙及び丙が競売による分割を求めているのに対し、甲及び他の共有者は、右不動産を競売に付することなく、自らがこれを取得するいわゆる全面的価格賠償の方法による分割を提案していると…
事件番号: 平成22(受)2355 / 裁判年月日: 平成25年11月29日 / 結論: その他
1 共有物について,遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合,共有者が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり,共有物分割の判決によって遺産共有持分を有していた者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消につい…