共有土地の分割をする場合において、共有者の一人である甲が二二八分の二二三の持分を有するのに対し、甲以外の五名の共有者の持分は各二二八分の一であり、右持分に相当する土地は、面積の合計が三二・一平方メートルにすぎず、共有土地の所在する場所等も併せ考えると社会的、経済的効用が乏しいこと、甲は、右土地を競売に付することなく、自らがこれを単独で取得するいわゆる全面的価格賠償の方法による分割を希望していること、さらに、右土地の価格が適正に評価されており、甲以外の共有者に対する持分の価格の賠償が困難であるとは考えられないことなど判示の事実関係の下においては、右土地を甲に取得させるのが相当であり、かつ、価格賠償の方法によっても共有者間の実質的公平を害するおそれはないものと認められるから、全面的価格賠償の方法により右土地を分割することが許される。
いわゆる全面的価格賠償の方法により共有物を分割することが許されるとされた事例
民法258条
判旨
民法258条に基づく共有物分割において、現物分割や競売による分割に限らず、特定の共有者に目的物を取得させ、他の共有者に持分価格を賠償させる「全面的価格賠償」も、実質的公平を害しない特段の事情がある場合には許容される。
問題の所在(論点)
民法258条が規定する現物分割および競売以外の方法として、特定の共有者に取得させ他の共有者に金銭を支払う「全面的価格賠償」による分割が認められるか。
規範
共有物分割の裁判の本質は非訟事件であり、裁判所の適切な裁量により、共有者間の公平と実情に合った妥当な分割を実現すべきである。したがって、以下に掲げる「特段の事情」がある場合には、全面的価格賠償の方法も許される。(1)共有物の性質・形状、共有関係の発生原因、持分割合、利用状況、分割後の経済的価値、各共有者の希望等の事情を総合考慮し、特定の者に取得させることが相当と認められること、(2)価格が適正に評価されていること、(3)取得者に支払能力があること、(4)他の共有者に価格を取得させても実質的公平を害さないこと。
重要事実
本件土地(ため池・現況草地)につき、被上告人が228分の223、上告人ら5名が各228分の1の持分を有していた。被上告人は全面的価格賠償による単独取得を希望したが、上告人らは自己の持分合計(32.1平方メートル)を共有で残す現物分割を主張した。不動産鑑定士による評価額は1平方メートル当たり2万9700円(上告人各19万1000円)であり、不合理な点はなかった。
あてはめ
まず、上告人らの持分合計は32.1平方メートルと極めて少面積であり、現物分割しても社会的・経済的効用が乏しいため、被上告人に単独取得させることが相当である。次に、土地価格は不動産鑑定に基づき適正に評価されており、賠償額も少額(各約19万円)であることから被上告人の支払能力に問題はなく、上告人らに持分価格を取得させても実質的公平は害されない。以上より、本件では全面的価格賠償を認めるべき「特段の事情」が認められる。
結論
本件土地を被上告人の単独所有とし、上告人らに対して持分価格の賠償を命じた原審の判断は、分割方法に関する裁量の範囲内として適法である。
実務上の射程
本判決は全面的価格賠償のリーディングケースである。答案上は、まず民法258条の原則(現物分割)に触れた上で、本判決の4要件(相当性・適正評価・支払能力・実質的公平)を定立し、持分割合の著しい乖離や分割後の土地利用の非効率性を具体的事実から指摘して、特段の事情を肯定する流れで記述する。
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