譲渡担保権設定者は、譲渡担保権の実行として譲渡された不動産を取得した者からの明渡請求に対し、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる。
譲渡担保権の実行として譲渡された不動産を取得した者の譲渡担保権設定者に対する明渡請求と譲渡担保権設定者の留置権の主張の可否
民法295条,民法369条(譲渡担保)
判旨
不動産譲渡担保権者が担保権実行として目的不動産を第三者に譲渡した場合、設定者は、当該第三者(及び転得者)からの明渡請求に対し、清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張できる。
問題の所在(論点)
譲渡担保権が実行され、目的不動産が第三者・転得者に譲渡された場合において、設定者が「譲渡担保権者(売主)」に対して有する清算金支払請求権を被担保債権として、現在の所有者である「転得者」に対し、留置権(民法295条1項)を主張できるか。
規範
不動産譲渡担保において、譲渡担保権者が担保権実行により目的物を第三者に譲渡した場合、設定者は、当該第三者または転得者からの明渡請求に対し、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権として、民法295条1項に基づく留置権を行使できる。
重要事実
設定者(被上告人)は、Dからの借入債務を担保するため、自己所有の建物に譲渡担保権を設定し、Dへ所有権移転登記を経由した。被上告人が返済を遅滞したため、Dは担保権実行として本件建物をEに売却し、その後Fを経て、上告人へ転売された。現在、上告人名義の登記がなされているが、被上告人は依然として建物を占有しており、Dは被上告人に対し清算金の支払義務を負っている状態であった。
あてはめ
まず、清算金支払請求権は、目的物の返還義務(所有権移転)と対価的な関係にあり、「その物に関して生じた債権」として牽連性が認められる。次に、譲渡担保権の実行により所有権を取得した第三者や転得者は、譲渡担保権者の地位を承継したのと同様の負担を負うべき関係にある。本件では、Dが清算金支払義務を負っている以上、設定者である被上告人は、Dから清算金を受けるまで、Dの譲渡先である上告人に対しても建物の留置を主張し、明渡しを拒絶できると解される。
結論
被上告人は上告人に対し、清算金の支払を受けるのと引換えに本件建物を明け渡せば足り、留置権の抗弁は認められる。
実務上の射程
譲渡担保における「清算金」と「明渡し」の同時履行関係を実質的に拡張し、物権的効力を有する留置権として構成したものである。答案上は、清算金支払請求権の牽連性を肯定する根拠として本判例を引用し、転得者に対しても主張可能であることを明示する。
事件番号: 昭和55(オ)211 / 裁判年月日: 昭和58年3月31日 / 結論: その他
清算金の支払のないまま仮登記担保権者から第三者が目的不動産の所有権を取得した場合には、債務者は、右第三者からの右不動産の明渡請求に対し、仮登記担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。