清算金の支払のないまま仮登記担保権者から第三者が目的不動産の所有権を取得した場合には、債務者は、右第三者からの右不動産の明渡請求に対し、仮登記担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。
清算金の支払のないまま仮登記担保権者から目的不動産の所有権を取得した第三者の債務者に対する右不動産の明渡請求と債務者の留置権の抗弁
民法295条,民法482条,仮登記担保契約に関する法律3条1項
判旨
譲渡担保権者が目的物を第三者に譲渡した場合、譲受人は特段の事情がない限り清算金支払義務を承継しないが、設定者は清算金支払債権を被担保債権とする留置権を譲受人に対しても主張できる。留置権の行使による占有は適法であるため、設定者は譲受人に対し、清算金支払との引換給付を主張でき、かつ明渡しまでの賃料相当損害金の支払義務を負わない。
問題の所在(論点)
1. 譲渡担保権者から目的物を譲り受けた第三者は、清算金支払義務を承継するか。 2. 設定者は譲受人に対して留置権を主張できるか。 3. 留置権を行使して占有を継続する場合、不法占有に基づく損害賠償義務を負うか。
規範
1. 譲渡担保の目的物が譲渡された場合、譲受人と譲渡人の間で重畳的債務引受の合意があるなどの特段の事情がない限り、譲受人は清算金支払義務を承継しない。 2. もっとも、清算金支払請求権は、目的物に関して生じた債権であるから、民法295条に基づき、設定者は譲受人に対しても清算金の支払を受けるまで留置権を行使して明渡しを拒絶できる。 3. 留置権の行使として目的物を占有することは適法であるから、不法占有を理由とする損害賠償義務(民法709条)は成立しない。
重要事実
債権者Eは債務者Dに対する貸金債権の担保として、本件土地建物につき代物弁済予約をし仮登記を経た。その後、Dの支払遅延によりEは予約完結権を行使し本登記を了したが、清算金(約386万円)は未払であった。その後、DとEの間で、所有権を確定的にEに移転させる合意(本件合意)がなされた。第三者である被上告人は、Eから本件土地建物を買い受け所有権移転登記を了したが、その際、EがDに対して清算金を支払っていない事実を知っていた。Dを相続した上告人らは、被上告人からの明渡請求に対し、清算金の支払との同時履行または留置権を主張して拒絶するとともに、不法占有に基づく損害金の支払を争った。
あてはめ
1. 被上告人はEから本件土地建物を買い受けて確定的に所有権を取得しており、清算金の未払を知っていたとしても、特段の事情がない限り、清算金支払義務という個人的債務まで承継するものではない。したがって、被上告人自身が清算金支払義務を負うとする原審の判断は誤りである。 2. しかし、上告人らの有する清算金支払請求権は本件土地建物に関して生じた債権といえるため、民法295条の留置権が成立する。上告人らは、譲受人である被上告人に対しても、Eから清算金の支払を受けるまで留置権を行使して明渡しを拒むことができる。 3. 上告人らによる占有は留置権という適法な権原に基づくものであるから、占有の継続に違法性は認められない。したがって、不法占有を理由とする賃料相当損害金の支払請求は失当である。
結論
1. 明渡請求に対しては、譲渡担保権者(E)からの清算金支払との引換給付が認められる(本件では不利益変更禁止の原則から被上告人との引換給付が維持された)。 2. 占有は適法であるため、不法占有に基づく賃料相当損害金の請求は棄却される。
実務上の射程
譲渡担保における清算金支払と目的物明渡しの関係を整理した重要判例である。答案上は、(1)譲受人への清算金義務の承継否定、(2)譲受人に対する留置権の成立、(3)留置権行使による損害賠償責任の否定、という三段構えで論述する。特に「物に関して生じた」という留置権の要件充足性を意識して記述すべきである。
事件番号: 昭和45(オ)60 / 裁判年月日: 昭和45年5月28日 / 結論: 棄却
一、地上権の時効取得が成立するためには、土地の継続的な使用という外形的事実が存在するほかに、その使用が地上権行使の意思にもとづくものであることが、客観的に表現されていることを要する。 二、右成立要件の立証責任は、地上権の時効取得の成立を主張する者の側にある。
事件番号: 平成5(オ)358 / 裁判年月日: 平成9年4月11日 / 結論: 棄却
譲渡担保権設定者は、譲渡担保権の実行として譲渡された不動産を取得した者からの明渡請求に対し、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる。
事件番号: 昭和42(オ)1279 / 裁判年月日: 昭和46年3月25日 / 結論: 破棄差戻
貸金債権担保のため債務者所有の不動産につき譲渡担保契約を締結し、債務者が弁済期に債務を弁済すれば、右不動産を債務者に返還するが、弁済をしないときは右不動産を債務の弁済に代えて確定的に債権者の所有に帰せしめるとの合意のもとに所有権移転登記が経由されている場合において、債務者が弁済期に債務の弁済をしないときは、債権者は、目…
事件番号: 昭和41(オ)215 / 裁判年月日: 昭和41年6月24日 / 結論: 棄却
土地の不法占拠により土地所有者の蒙る損害額を、右土地を他に賃貸することにより通常得べかりし賃料相当額にあたる、と判断した点に違法はない。