預託金会員制ゴルフクラブの規則に、会員が死亡したときは、相続人は、六箇月以内に、預託金の返還、相続人のうち一名への名義書換え又は第三者への会員資格の譲渡のいずれかの手続を選択して理事長に届け出なければならず、相続人が右期間内に所定の届出をしないときは預託金の返還手続がとられる旨の定めがある場合に、右クラブの会員権は、他人に譲渡することが認められ、ゴルフ会員権市場において預託金の金額よりも高額の取引価格で売買されており、相続人から所定の会費が納入されている限り、会員の地位の承継の手続が遅延することによってゴルフクラブ側が格別の不利益を被ることはないなど判示の事情の下においては、右規則は、相続人間で遺産分割協議が成立した後六箇月以内に所定の届出をしなければならない旨を定めたものと解すべきである。
預託金会員制ゴルフクラブの規則に会員の死亡後六箇月以内に届出をした相続人が会員の地位を承継し得るなどの定めがある場合に右の届出期間は遺産分割協議が成立した時から起算すべきであるとされた事例
民法第3編第2章契約,民法896条,民法907条
判旨
預託金会員制ゴルフクラブの会則に定める相続手続の期間制限(6箇月)は、相続人が複数いる場合、遺産分割協議が成立した時から起算されると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
会員が死亡し相続人が複数存在する場合において、ゴルフクラブの会則が定める相続手続の選択期間(6箇月)の起算点をいつと解すべきか。遺産分割協議の成立を待たずに「死亡時」から進行するかが争点となった。
規範
預託金会員制ゴルフクラブの会員権が譲渡性を有し、市場で高額に取引されている場合において、相続人による手続期間を制限する会則の解釈にあたっては、相続人に著しい財産上の不利益を一方的に被らせないよう配慮すべきである。具体的には、相続人が複数存在し、遺産分割協議に時間を要し得るという実態に鑑み、特段の事情のない限り、当該期間の起算点は「会員の死亡時」ではなく「遺産分割協議の成立時」と解すべきである。
事件番号: 平成6(オ)1361 / 裁判年月日: 平成7年1月20日 / 結論: 破棄自判
ゴルフクラブの預託金制の平日会員としての入会契約の関係書類に会員権の譲渡を禁止する旨が直接明記されていなくても、会員募集要項において、正会員の株式の譲渡が自由であることを述べながら平日会員権の譲渡の可否に触れておらず、平日会員権と独立して他に譲渡することのできない家族会員権とを全く同列に扱い、規約の施行細則において正会…
重要事実
上告人は預託金会員制ゴルフクラブを経営しており、その規則では、会員死亡から6箇月以内に相続人が名義書換等の手続を届け出ない場合、預託金返還手続のみに限定される旨を定めていた。会員Fが死亡し、相続人は被上告人を含む5名であったが、遺産分割協議により被上告人が会員権を取得することが決まったのは死亡から約8箇月後であった。被上告人は協議成立の4日後に名義書換を求めたが、上告人は死亡後6箇月の経過を理由にこれを拒否した。当時、当該会員権の取引価格は預託金額(40万円)を大幅に上回る約3400万円であった。
あてはめ
本件会員権は他人に譲渡可能で、預託金を遥かに超える市場価値を有している。また、会則上も相続人が会員資格を承継できることが予定されている。一方で、相続人が複数いる場合は遺産分割協議に時間を要し、6箇月以内に手続を選択できない事態が生じ得る。会費が納入されている限り、承継手続の遅延によりクラブ側が受ける不利益は格別存在しない。これに対し、起算点を死亡時と解すれば、協議が遅れた相続人は市場価値の高い会員権を失い、預託金返還請求権のみに制限されるという著しい財産上の不利益を一方的に被ることになる。
結論
相続人が複数いる場合、本件規則の期間は「遺産分割協議が成立した時」から起算される。被上告人は協議成立後直ちに申し出ており、手続期間内に名義書換を選択したものと認められる。
実務上の射程
契約条項や社内規則の解釈において、一方の当事者に不当な不利益を課す結果となる場合に、文言を制限的に解釈して合理的な権利保護を図る手法として活用できる。特に遺産分割という不可避な法的プロセスが介在する場合の期間制限の解釈に有用である。
事件番号: 平成6(オ)1593 / 裁判年月日: 平成9年3月25日 / 結論: 棄却
預託金会員制ゴルフクラブにおいて、会則等に会員としての地位の相続に関する定めがなくても、右地位の譲渡に関する定めがあるなど判示の事実関係の下においては、会員の死亡によりその相続人は右地位の譲渡に準ずる手続を踏んでこれを取得することができる。
事件番号: 平成8(オ)255 / 裁判年月日: 平成9年7月1日 / 結論: 破棄自判
一 事情変更の原則を適用するためには、契約締結後の事情の変更が、契約締結時の当事者にとって予見することができず、かつ、右当事者の責めに帰することのできない事由によって生じたものであることが必要である。 二 自然の地形を変更してゴルフ場を造成したゴルフ場経営会社は、ゴルフクラブ入会契約締結後にゴルフ場ののり面が崩壊したと…
事件番号: 平成10(オ)1116 / 裁判年月日: 平成12年3月9日 / 結論: 破棄自判
預託金会員制ゴルフクラブの会員がゴルフ場施設を利用した場合に発生すべき所定の施設利用料金の支払義務は、破産法五九条一項の未履行債務に当たらない。