預託金会員制ゴルフクラブの施設利用権の消滅時効は、会員が施設の利用をしない状態が継続したことのみによっては進行せず、ゴルフ場経営会社が、会員に対してその資格を否定して施設の利用を拒絶し、あるいは会員の利用を不可能な状態としたような時から進行し、右利用権が時効により消滅したときは、ゴルフ会員権は、包括的権利としては存続し得ない。
預託金会員制ゴルフクラブの施設利用権の消滅時効と会員権の消長
民法166条1項,民法167条1項,民法第3編第2章契約
判旨
預託金会員制ゴルフ会員権の消滅時効は、単なる未利用では進行しないが、施設側が会員資格を否定して利用を拒絶した時点、または施設を閉鎖した時点から進行する。
問題の所在(論点)
預託金会員制ゴルフ会員権のような、継続的契約関係に基づく包括的な地位(債権的権利)について、消滅時効が進行・完成し、当該地位が消滅することがあるか。また、その起算点はいつか。
規範
預託金会員制ゴルフ会員権における施設利用権は、包括的契約関係の基本的部分を構成する債権である。施設側が利用可能な状態を維持している限り、債務の履行が継続しているため消滅時効は進行しないが、①除名等を理由に資格を否定して利用を拒絶したとき、または②施設を閉鎖して利用不可能な状態としたときは、債務の履行状態が消滅し権利行使を妨げる事実が生じたといえるため、その時点から消滅時効が進行する(民法166条1項、旧291条参照)。
重要事実
被上告人は、昭和37年に上告会社と入会契約を締結し個人正会員となったが、昭和44年以降ゴルフ場施設を利用していなかった。被上告人が正会員の地位確認を求めたところ、上告会社は、長期間の不利用を理由に、ゴルフ会員権(施設利用権)は消滅時効にかかっていると主張して争った。
あてはめ
本件ゴルフ会員権は、施設利用権、年会費納入義務、預託金返還請求権を内容とする債権的契約関係である。被上告人が施設を利用していない事実のみでは、上告会社による「施設を利用可能な状態に保持する」という債務の履行が継続しているため、時効は進行しない。しかし、もし上告会社が被上告人の資格を否定して利用を拒絶するなどの客観的事態が生じていれば、その時点から時効が進行し、基本的部分である施設利用権が時効消滅すれば、包括的権利としての会員権も存続し得ない。原審は、こうした拒絶等の事実の有無を検討せずに時効にかからないと断じた点で審理不尽がある。
結論
会員権という契約上の地位それ自体が当然に時効にかからないわけではなく、施設側による利用拒絶等の客観的な履行停止状態が生じた場合には、施設利用権の時効消滅を通じて会員権も消滅し得る。
実務上の射程
継続的契約に基づく地位の消滅時効について、単なる権利の「不行使」ではなく、相手方の「債務履行の停止(拒絶)」をトリガーとする判断枠組みを示した。答案上、形成権的な地位や包括的な債権的地位の消滅時効が問われた際、債務の履行継続の有無から起算点を論じる際の参照判例となる。
事件番号: 昭和50(オ)270 / 裁判年月日: 昭和53年6月16日 / 結論: その他
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事件番号: 平成6(オ)1361 / 裁判年月日: 平成7年1月20日 / 結論: 破棄自判
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事件番号: 平成8(オ)255 / 裁判年月日: 平成9年7月1日 / 結論: 破棄自判
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