一 ゴルフクラブ入会契約がゴルフ場の建設工事中である昭和六二年五月に締結されたが、右契約に基づくゴルフ場施設を利用可能な状態にした上これを会員の利用に供すべき債務の履行期を記載した契約証書が作成されておらず、募集パンフレットには完成同六三年秋予定という記載があったにすぎず、右契約当時においては平成元年に開場することが予定されていたなど判示の事実関係の下においては、右債務の履行期は、工事の進ちょく状況及び社会経済状況に照らして、右開場予定時期から工事の遅延に関して予想される合理的な期間が経過した時という不確定期限とみるべきである。 二 ゴルフ場の建設工事中である昭和六二年五月に締結されたゴルフクラブ入会契約に基づくゴルフ場施設を利用可能な状態にした上これを会員の利用に供すべき債務の履行期が、開場予定時期である平成元年から工事の遅延に関して予想される合理的な期間が経過した時という不確定期限である場合において、調整池予定地の買収ができなかったことなどが原因で工事が遅延したが、その後の努力により工事が進ちょくし、右契約を解除する旨の意思表示がされた同四年二月一日には、既に視察プレーの名目の下における営業が開始され、近々債務の本旨に従った履行がされることがほぼ確実に見込まれていたなど判示の事実関係の下においては、右意思表示の時点において右債務の履行期が到来していたとはいえない。 三 ゴルフ場の建設工事中にゴルフクラブ入会契約が締結されたが、コースレイアウトについて図面等に基づく詳細な合意がされたものではなく、募集パンフレットには、高低差一〇メートル以内のフラットなコースとする旨の記載があるが、他方、一五メートルの高低差のあるホールの断面図も記載されており、また、当初の予定は調整池予定地の買収ができなかったことなどが原因で変更されたものの、ゴルフ場完成時においては全一八ホール中過半数のホールが高低差二〇メートル未満であったなど判示の事実関係の下においては、ゴルフ場経営会社に、コースレイアウトについてできるだけ高低差が少なく全体としてフラットといい得るコースを作るという債務の不完全履行があるとはいえない。
一 ゴルフ場建設工事中に締結されたゴルフクラブ入会契約における開場すべき債務の履行期が工事の遅延に関して予想される合理的な期間が経過した時という不確定期限であるとされた事例 二 ゴルフ場建設工事中に締結されたゴルフクラブ入会契約における開場すべき債務の履行につき不確定期限が到来していないとされた事例 三 ゴルフ場建設工事中に締結されたゴルフクラブ入会契約においてゴルフ場経営会社にゴルフ場の高低差等のコースレイアウトに関する債務の不完全履行があるとはいえないとされた例
民法第3編第2章契約,民法412条2項,民法415条
判旨
建設中のゴルフ場入会契約における履行期は、特段の合意がない限り、当初の予定時期より合理的な期間の遅延が許容される不確定期限と解するのが相当である。また、パンフレット上のコーススペックの記載は、直ちに厳密な給付内容としての債務となるものではない。
問題の所在(論点)
1. 履行期を明記していない建設中ゴルフ場の入会契約において、履行遅滞が認められるための「履行期」をいかに解すべきか。2. パンフレット記載のコース仕様や敷地所有形態の不一致が、解除事由となる債務不履行を構成するか。
事件番号: 平成10(オ)71 / 裁判年月日: 平成11年11月30日 / 結論: 破棄差戻
ゴルフ場経営会社がゴルフクラブの会員募集用のために作成したパンフレットにはゴルフ場に高級ホテルが併設されることが強調されており、右ゴルフクラブの入会金及び預託金の額は右パンフレットに記載されたゴルフ場の特徴に相応して高額になっていたが、実際にゴルフ場経営会社によって提供された施設はその規模や構造等において右パンフレット…
規範
1. 建設中のゴルフ場入会契約において履行期の明文がない場合、その履行期は、当初予定時期に建設工事の進捗状況や社会経済状況に照らして予想される「合理的な遅延期間」を加算した時とする不確定期限と解する。2. 募集パンフレット等の表示は、契約証書等で詳細な合意がない限り、その抽象的な内容や当時の取引慣行を考慮し、具体的な債務の内容として確定すべきである。
重要事実
上告人は、昭和62年に被上告人とゴルフ場入会契約を締結し2200万円を支払った。パンフレットには「昭和63年秋完成、平成元年開場予定」「高低差10m以内のフラットなコース」「100%社有地」等の記載があった。実際には用地買収の難航等で工事が遅延し、平成3年7月に会員限定の制限的利用(視察プレー)を開始した。上告人は平成4年2月に履行遅滞等を理由に解除を通知したが、被告は平成4年7月に正式開場した。
あてはめ
1. 当時の慣行として開場が数年遅れることは常態化しており、会員側も値上がりを期待して遅延を許容する傾向があった。解除時点(平成4年2月)では視察プレーが開始され、近々本旨履行が確実視されていたため、合理的な遅延期間内であり履行期は未到来といえる。2. 高低差についても、パンフレット内の他箇所に15mの記載もあり、全ホール厳密な数値を約したものではなく「全体としてフラット」という趣旨に留まる。また、敷地の一部が借地である点や「名門」等の抽象的表現は、契約の根幹をなす債務不履行とはいえない。
結論
本件解除の意思表示時点で履行期は到来しておらず、またその他の主張も債務不履行には当たらないため、解除は認められない。
実務上の射程
契約書に履行期の定めがない不確定な継続的契約において、当時の取引慣行や社会通念、当事者の期待を考慮して履行期を「弾力的」に解釈する際の指針となる。特にパンフレットの記載がどこまで契約内容化(債務化)するかという論点において、厳密な一致を求めるか、概括的な目標に留まるかを判断する基準として重要である。
事件番号: 平成10(オ)1116 / 裁判年月日: 平成12年3月9日 / 結論: 破棄自判
預託金会員制ゴルフクラブの会員がゴルフ場施設を利用した場合に発生すべき所定の施設利用料金の支払義務は、破産法五九条一項の未履行債務に当たらない。
事件番号: 平成8(オ)2224 / 裁判年月日: 平成12年2月29日 / 結論: 破棄自判
一 破産宣告当時双務契約の当事者双方に未履行の債務が存在していても、契約を解除することによって相手方に著しく不公平な状況が生じるような場合には、破産管財人は破産法五九条一項に基づく解除権を行使することができない。 二 年会費の定めのある預託金会員制ゴルフクラブの会員が破産した場合において、破産管財人が会員契約を解除する…