ゴルフクラブの預託金制の平日会員としての入会契約の関係書類に会員権の譲渡を禁止する旨が直接明記されていなくても、会員募集要項において、正会員の株式の譲渡が自由であることを述べながら平日会員権の譲渡の可否に触れておらず、平日会員権と独立して他に譲渡することのできない家族会員権とを全く同列に扱い、規約の施行細則において正会員の名義書換料を定めながら平日会員については名義書換料を定めていなかったなど判示の事実関係の下においては、右入会契約には会員権の譲渡を禁止する特約が付されていたというべきである。
ゴルフクラブの預託金制の平日会員としての入会契約について会員権の譲渡を禁止する特約が付されていたものとされた事例
民法466条
判旨
預託金制ゴルフ会員権は、契約書類に明記がなくとも、募集要項の記載、名義書換料の定めの有無、規約変更時の会員の対応等の諸事情を総合考慮し、譲渡禁止の黙示の特約が認められる場合がある。
問題の所在(論点)
入会契約の関係書類に譲渡禁止の明文規定がない場合において、預託金制ゴルフ会員権の譲渡禁止の特約が認められるか。
規範
預託金制ゴルフクラブ会員権は、その性質上、当然に譲渡が禁止されるものではない。譲渡の可否は入会契約の当事者の合意に委ねられるが、契約書類に明示的な規定がない場合であっても、募集要項の体裁、名義書換料に関する定めの有無、家族会員等との対比、及び規約変更後の会員の態度といった諸事情を総合し、経験則に照らして譲渡禁止の特約を認定することができる。
重要事実
平日会員(旧会員)らは、昭和44〜45年頃、上告人と入会契約を締結した。当時の規約等には、平日会員権の譲渡可否の明記はなかったが、(1)募集要項で譲渡自由な正会員と対比しつつ平日会員の譲渡には触れず、家族会員と同列に扱っていたこと、(2)正会員には名義書換料の定めがある一方、平日会員にはなかったこと、(3)昭和50年の規約変更で「譲渡不能」と明記された際、旧会員らは異議なく施設利用を継続したこと、等の事情があった。その後、被上告人らは旧会員から会員権を買い受け、名義書換えを請求した。
あてはめ
まず、募集要項において、譲渡自由な正会員と、家族のみの資格で譲渡不能と解される家族会員とが平日会員と同列に扱われている点は、平日会員権の非譲渡性を示唆する。次に、会員権譲渡が予定されていれば重要な収入源となるはずの名義書換料が、平日会員についてのみ定められていないことも、譲渡を予定していないことの表れといえる。さらに、譲渡禁止を明文化する規約変更に対し、旧会員らが異議を唱えず利用を継続した事実は、当初から譲渡禁止の合意があったことを裏付けるものである。これらを総合すれば、本件契約には譲渡禁止の特約が付されていたと解するのが相当である。
結論
本件入会契約には譲渡禁止の特約が付されていたというべきであり、上告人は被上告人らへの名義書換えを拒否できる。
実務上の射程
契約の解釈において「黙示の合意」を認定する際の考慮要素(対比的表現、付随的費用の定め、事後の当事者の行動等)を具体的に示した事例として、民法上の意思表示・契約解釈の局面で汎用性が高い。特に明文の規定がない場合の「特約」の認定手法として参考になる。
事件番号: 平成5(オ)1169 / 裁判年月日: 平成9年5月27日 / 結論: 棄却
預託金会員制ゴルフクラブの規則に、会員が死亡したときは、相続人は、六箇月以内に、預託金の返還、相続人のうち一名への名義書換え又は第三者への会員資格の譲渡のいずれかの手続を選択して理事長に届け出なければならず、相続人が右期間内に所定の届出をしないときは預託金の返還手続がとられる旨の定めがある場合に、右クラブの会員権は、他…
事件番号: 平成8(オ)255 / 裁判年月日: 平成9年7月1日 / 結論: 破棄自判
一 事情変更の原則を適用するためには、契約締結後の事情の変更が、契約締結時の当事者にとって予見することができず、かつ、右当事者の責めに帰することのできない事由によって生じたものであることが必要である。 二 自然の地形を変更してゴルフ場を造成したゴルフ場経営会社は、ゴルフクラブ入会契約締結後にゴルフ場ののり面が崩壊したと…
事件番号: 平成11(受)461 / 裁判年月日: 平成12年10月20日 / 結論: 破棄自判
権利能力のない社団であるゴルフクラブが規約に従い総会の決議によってした構成員の資格要件であるゴルフ場経営会社の株式保有数を「二株以上」から「三株以上」に変更する旨の規約の改正は、特段の事情がない限り、右決議について承諾をしていない構成員に対しても、その効力を有する