一 事情変更の原則を適用するためには、契約締結後の事情の変更が、契約締結時の当事者にとって予見することができず、かつ、右当事者の責めに帰することのできない事由によって生じたものであることが必要である。 二 自然の地形を変更してゴルフ場を造成したゴルフ場経営会社は、ゴルフクラブ入会契約締結後にゴルフ場ののり面が崩壊したとしても、事情変更の原則の適用に関しては、特段の事情のない限り、右崩壊について予見不可能であったとはいえず、また、これについて帰責事由がなかったということもできない。
一 事情変更の原則と契約締結時の当事者の予見可能性及び帰責事由 二 ゴルフクラブ入会契約締結後のゴルフ場ののり面の崩壊という事情の変更とゴルフ場経営会社の予見可能性及び帰責事由
民法1条2項,民法第3編第2章契約
判旨
事情変更の原則を適用するためには、事情の変更が当事者にとって予見不能かつ無責であることが必要であり、契約上の地位の譲渡があった場合でも、その判断は契約締結当時の当事者を基準とすべきである。
問題の所在(論点)
契約上の地位が譲渡された場合、事情変更の原則の要件(予見不能・無責)の判断基準時はいつか。また、ゴルフ場の地盤崩壊がゴルフ場経営会社にとって予見不能・無責な事由に当たるか。
規範
契約締結後の事情変更を理由に契約の解除や改定を認める「事情変更の原則」を適用するためには、①契約締結後の事情の変更が、②当事者にとって予見することができず、かつ、③当事者の責めに帰することのできない事由によって生じたものであることを要する。契約上の地位の譲渡があった場合でも、予見可能性や帰責事由の存否は、契約締結当時の当事者について判断すべきである。また、ゴルフ場経営会社にとって、自然の地形を変更した箇所に崩壊が生じることは、特段の事情がない限り予見不能とはいえず、帰責事由がないともいえない。
重要事実
事件番号: 平成11(受)461 / 裁判年月日: 平成12年10月20日 / 結論: 破棄自判
権利能力のない社団であるゴルフクラブが規約に従い総会の決議によってした構成員の資格要件であるゴルフ場経営会社の株式保有数を「二株以上」から「三株以上」に変更する旨の規約の改正は、特段の事情がない限り、右決議について承諾をしていない構成員に対しても、その効力を有する
ゴルフ場会員(上告人ら)は、旧経営会社(D社)と優先的・優待的施設利用権等を含む会員契約を締結した。その後、事業を譲り受けた被上告人は、ゴルフ場の施工不良等に起因する大規模なのり面崩壊を受け、130億円を投じて全面改良工事を実施した。被上告人は、多額の修復費用を要した以上、追加の経済負担を拒否する上告人らに当初の契約通りの優先的利用権を認めることは信義則上不当であるとして、事情変更の原則の適用を主張した。
あてはめ
まず、本件における予見可能性等の判断は、現在の経営者(被上告人)ではなく、契約締結当時の当事者であるD社を基準とすべきである。次に、D社は自然の地形を変更してゴルフ場を造成した者であり、造成箇所は将来にわたり災害発生の可能性を否定できない。したがって、のり面崩壊や防災措置の必要性が生じることは、特段の事情がない限り、造成主であるD社にとって予見不能とはいえず、帰責事由がないともいえない。よって、修復に多額の費用を要したとしても、事情変更の原則を適用するための要件を欠く。
結論
上告人らは、被上告人に対し、本件ゴルフ場の会員資格のうち、従前の契約内容に基づく施設の優先的・優待的利用権を有する。
実務上の射程
契約の地位の承継があった事案において、事情変更の原則の要件検討対象が「当初の契約締結時の当事者」であることを明確にした点に実務上の意義がある。また、土木工事を伴う事業者が、地盤崩壊等の物理的要因を「予見不能な事情変更」として主張することに対し、厳しい判断枠組みを示している。
事件番号: 平成9(オ)96 / 裁判年月日: 平成11年11月9日 / 結論: その他
会員制レジャークラブの経営者がその施設のうちゴルフコースを廃止して新たなゴルフコースを開設した場合において、新コースが、旧コースの跡地に建設されたクラブ内の唯一のゴルフコースであるほか、経営者が、当初から将来的にはより敷地面積の広いコースを設置する計画を有しており、これを早くから公表し旧コース以上のコースが設置されるこ…
事件番号: 平成6(オ)1361 / 裁判年月日: 平成7年1月20日 / 結論: 破棄自判
ゴルフクラブの預託金制の平日会員としての入会契約の関係書類に会員権の譲渡を禁止する旨が直接明記されていなくても、会員募集要項において、正会員の株式の譲渡が自由であることを述べながら平日会員権の譲渡の可否に触れておらず、平日会員権と独立して他に譲渡することのできない家族会員権とを全く同列に扱い、規約の施行細則において正会…
事件番号: 平成7(オ)2080 / 裁判年月日: 平成8年7月12日 / 結論: 棄却
預託金会員制ゴルフクラブの会員権の譲渡をゴルフ場経営会社以外の第三者に対抗するには、指名債権の譲渡の場合に準じて、譲渡人が確定日付のある証書によりこれをゴルフ場経営会社に通知し、又はゴルフ場経営会社が確定日付のある証書によりこれを承諾することを要し、かつ、そのことをもって足りる。