刑訴法第三二一条第一項第二号但書の規定にいわゆる特信性の有無は事実審裁判所の裁量にまかされている趣旨であると解すべきである(昭和二六年(あ)第一一一一号同年一一月一五日第一小法廷判決、刑集五巻一二号二三九三頁参照)。
刑訴法第三二一条第一項第二号但書の規定の趣旨。
刑訴法321条1項2号
判旨
刑事訴訟法321条1項2号ただし書に規定される「特信性」(供述を録取した書面が特に可信すべき情況の下にされたものであること)の有無の判断は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
刑訴法321条1項2号ただし書における「特に可信すべき情況(特信性)」の有無について、裁判所はどのような基準で判断すべきか、またその判断はどのような性質を持つか。
規範
刑事訴訟法321条1項2号ただし書の規定は、いわゆる特信性の有無の判断について、事実審裁判所の合理的な裁量にまかされている趣旨であると解される。
重要事実
被告人の刑事事件において、検察官が作成した証人Aの供述調書が証拠として採用された。これに対し弁護人は、当該調書は特信性を欠くものであり、これを証拠として事実を認定したことは証拠裁判主義(刑訴法317条)および憲法31条に違反すると主張して上告した。なお、当該調書について任意性を欠くと認めるべき資料は存在しなかった。
あてはめ
判決文によれば、検察官に対するAの供述調書について任意性を欠くと認めるべき資料は見当たらないとされる。このような状況下で、法321条1項2号ただし書が定める特信性の有無の判断は、法律により事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられている。したがって、原審が特信性を認めて証拠採用した判断に特段の不合理は認められず、憲法違反や証拠裁判主義違反の主張は前提を欠くものといえる。
結論
特信性の有無は事実審裁判所の裁量に属する事柄であり、特段の事情がない限り、原審の証拠採用判断は適法である。
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法321条1項2号ただし書)の要件検討において、特信性の判断枠組みを示す際に引用される。答案上は、外部的事況(供述の際の状況、動機、誘導の有無等)から特信性を認定する際、その判断権限が裁判所にあることを示す根拠となるが、現代の司法試験実務では単なる裁量とするだけでなく、具体的な情況を緻密に評価することが求められる点に留意が必要である。
事件番号: 昭和26(あ)2987 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
窃盗共同正犯の訴因に対し、被告人が公判廷でこれを否認し、公訴事実の範囲内に属する窃盗幇助の事実を以つて弁解しており、その防禦に実質的な不利益を生ずる虞れのない場合には、訴因変更の手続をしないで、同幇助の事実を認定して差支えない。