論旨は判例違反をいうのであるが、所論は判例を具体的に示しているとは認められない(所論は判例を引用するにつき、その事件番号、宣告年月日を指示せず、単に事実を説明して大審院判例集一二巻二〇七丁以下参照としているが、右判例集の指定個所に所論引用の判例は発見できない)から、判例違反の主張として不適法である。
具体的に挙示しない判例違反の主張の適否。
刑訴規則253条,刑訴法405条3号
判旨
判例違反を理由とする上告において、引用判例の特定が不十分であり、かつ実質的に量刑不当等の不服を述べるに過ぎない場合は、適法な上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
上告趣意において判例を具体的に特定せず、実質的に事実誤認や量刑不当を主張する場合、刑訴法405条の上告理由として適法か。
規範
刑訴規則253条に基づき、判例違反を主張する際には、引用する判例を具体的に特定しなければならない。また、刑訴法405条所定の上告理由(憲法違反、判例違反等)に該当しない事実誤認、単なる訴訟法違反、または量刑不当の主張は、適法な上告理由を構成しない。
重要事実
弁護人が上告趣意において、判例違反を主張した。しかし、その引用に際して事件番号や宣告年月日を明示せず、単に「大審院判例集12巻207丁以下参照」としたのみであり、指定された箇所に該当する判例が発見できない状態であった。さらに、その他の主張内容は事実誤認や量刑不当に関するものであった。
あてはめ
本件において弁護人が示した判例の引用方法は、事件番号等の指示を欠き、指定箇所に判例が存在しないため、判例を具体的に示しているとは認められない。これは刑訴規則253条に違反し、判例違反の主張として不適法である。また、事実誤認や量刑不当の主張は、刑訴法405条が限定的に列挙する上告理由のいずれにも該当しない。
結論
本件各上告は、適法な上告理由を欠くため、刑訴法414条、386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における上告趣意書作成の実務上、判例違反を構成するためには、判例の特定(事件番号、日付等)を厳格に行う必要がある。適法な上告理由を欠く形式的な主張は、職権調査の対象(411条)とならない限り、門前払いされることを示す。
事件番号: 昭和48(あ)2590 / 裁判年月日: 昭和49年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判例違反を理由とする上告において、裁判所名と言渡日を指摘するのみでは「判例の具体的な摘示」を欠くため、適法な上告理由にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人が、原審の判断に憲法違反、判例違反、事実誤認、法令違反があるとして上告を申し立てた。このうち判例違反の主張については、上告趣意書において裁判…