判旨
控訴申立が一部の訴因に限られている場合、控訴審が申立の対象外であり既に確定した他の部分についてまで審判することは、審判の対象を誤った違法な判決となる。
問題の所在(論点)
数個の訴因のうち一部についてのみ控訴がなされた場合に、控訴審が控訴の対象外である他の訴因についても審判できるか(控訴審の審判範囲と確定の有無)。
規範
控訴審の審理対象は、当事者が控訴の申立をした範囲に限られる。一部の訴因についてのみ控訴がなされ、他の部分について被告人からも検察官からも控訴がなされていない場合、その部分は確定し控訴審に係属しないため、これについて審判をすることは許されない。
重要事実
被告人は道路交通法53条違反(第一訴因)と同法54条違反(第二訴因)で起訴された。第一審判決は、53条違反について無罪、54条違反について有罪とした。検察官は無罪部分である53条違反についてのみ控訴し、有罪部分である54条違反については、検察官・被告人のいずれからも控訴の申立がなされた形跡はなかった。しかし、原審(控訴審)は、控訴の対象となった53条違反のみならず、既に確定したはずの54条違反についてもあわせて審判を行った。
あてはめ
検察官の控訴申立書によれば、控訴の対象は「無罪部分(第一の訴因―道路交通法53条違反)」に限定されていることが明らかである。一方で、有罪部分(第二の訴因―54条違反)については、検察官からも被告人からも控訴がなされていない。そうであれば、有罪部分は控訴期間の経過により確定しており、原審に係属していない。したがって、原審がこれを含めて審判したことは、審判の対象を欠く事項を裁いたものであり、正義に反する重大な違法があるといえる。
結論
控訴がなされず確定した部分は控訴審に係属しないため、これについて審判した原判決は違法として破棄を免れない。
実務上の射程
併合罪として1個の裁判で処理される事件であっても、訴因ごとに上訴の可否を判断できることを前提としている。答案上は、審判の対象(378条11号参照)や控訴の射程が問題となる場面で、当事者の申立範囲が控訴審の審理・裁判の限界を画することを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和39(あ)101 / 裁判年月日: 昭和39年7月16日 / 結論: 棄却
上訴審において訴訟費用の裁判を是正すべき場合は、単に本案の裁判に対し上訴の申立があつただけでは足りず、その上訴が適法でありかつ理由があり、本案についても下級審の判決が取消される場合にかぎるものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところであり―昭和三〇年(あ)第二九五五号同三一年一二月一三日第一小法廷判決参照―所論控訴…
事件番号: 昭和61(あ)1387 / 裁判年月日: 昭和62年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴されていない犯罪事実(余罪)を、実質的に処罰する趣旨で量刑の資料に供することは許されない。もっとも、単なる情状として考慮することは、不告不理の原則や適正手続きに反しない。 第1 事案の概要:被告人が起訴された事実以外のいわゆる「余罪」について、第一審判決が量刑の資料として考慮した。弁護人は、こ…