本件所得税法違反被告事件の如き間接国税以外の国税に関する犯則事件については、収税官吏の告発をもつて公訴提起の訴訟事件と解することはできないことは既に当裁判所の判例とするところであり、今なおこれを変更すべきものとは認められない(昭和二八年(あ)第一六号同年九月二四日第一小法廷判決、刑集七巻九号一八二五頁参照)。
間接国税以外の国税に関する犯則事件について告発は公訴提起の訴訟条件か。
国税犯則取締法12条ノ2,刑訴法239条
判旨
所得税法違反などの直接税に関する犯則事件においては、間接国税犯と異なり、収税官吏の告発を公訴提起の訴訟条件と解することはできない。
問題の所在(論点)
直接税(所得税法等)違反の犯則事件において、収税官吏の告発は公訴提起のための訴訟条件となるか。
規範
間接国税以外の国税(直接税等)に関する犯則事件については、法律上、収税官吏の告発を公訴提起の要件とする旨の規定はなく、これを訴訟条件と解することはできない。
重要事実
被告人らは所得税法違反等の罪に問われたが、弁護人は、間接国税犯と同様に収税官吏の告発がなければ公訴を提起できない(訴訟条件である)と主張し、告発がないままなされた公訴提起の有効性を争って上告した。
あてはめ
間接国税に関する犯則事件では告発を要する旨の規定が存在する一方、本件のような所得税法違反といった間接国税以外の国税に関する犯則事件については、収税官吏の告発を公訴提起の訴訟条件と解すべき根拠がない。したがって、告発を前提とせずに公訴を提起することは適法である。
結論
所得税法違反被告事件において収税官吏の告発は訴訟条件ではなく、告発がなくても公訴提起は有効である。
実務上の射程
刑事訴訟法上の公訴提起の原則(国家訴追主義)に対する例外としての「告発」の要否を検討する際に、対象となる犯則事件の種類(直接税か間接税か)によって訴訟条件の有無を区別する基準として用いる。
事件番号: 昭和33(あ)1569 / 裁判年月日: 昭和38年2月12日 / 結論: その他
所得税逋脱の意思による場合であつても、単に確定申告書を提出しなかつただけでは、所得税法第六九条第一項の罪(所得税逋脱罪)は成立しない。