記録によれば、第一審において、被告人に対する起訴罪名甲乙丙の各罪の事実につき有罪を認め、甲乙の罪につき懲役刑を丙の罪につき罰金刑を言渡したところ、検察官から右甲乙の各罪に関する部分を限つて控訴の申立がなされ、被告人からは右判決に対して控訴の申立がなされないまま、その申立期間を経過したことが認められるにもかかわらず、第二審において、右第一審判決にかかる事件の全部について審判し、右丙罪についても、第一審判決を破棄したうえ、被告人を罰金刑に処する旨の判決をしている。右によれば第二審は被告人に対する丙罪について、係属していない事件の審判をした違法があり、この違法は判決に影響があるから刑訴法第四一一条第一号により破棄を免れない。
刑訴法第四一一条第一号にあたるとされた事例。
刑訴法411条1号,刑訴法357条
判旨
第一審が併合罪の関係にある数罪について別個の刑を言い渡した場合、検察官がその一部の罪のみを不服として控訴し、被告人が控訴しなかったときは、控訴されなかった罪の部分は確定し、控訴審には係属しない。
問題の所在(論点)
併合罪として別個の刑が言い渡された数罪のうち、一部の罪についてのみ控訴がなされた場合、控訴されなかった残りの罪の部分は控訴審の審判対象に含まれるか(事件の係属範囲)。
規範
併合罪の関係にある各罪に対し別個の刑が言い渡された場合、上訴不可分の原則(刑事訴訟法348条参照)の適用範囲は、上訴によって不服が申し立てられた対象に限定される。不服の対象とならなかった罪につき、上訴期間の経過によって確定したときは、その部分は控訴審の審判対象から切り離され、控訴審は当該部分について審判権を有しない。
重要事実
第一審は、被告人に対し、傷害および暴力行為等処罰法違反の罪について懲役2年、外国人登録法違反の罪について罰金1万円をそれぞれ言い渡した。検察官は、懲役刑が科された罪の部分のみを限定して控訴し、被告人は控訴しなかった。しかし、控訴審(原審)は、外国人登録法違反の罪についても第一審判決を破棄し、改めて罰金1万円に処する判決を言い渡した。
あてはめ
本案において、検察官は懲役刑に処せられた各罪のみを限って控訴を申し立てており、被告人からは控訴がなされていない。そのため、不服の対象外であった外国人登録法違反の罪については、控訴期間の経過により昭和37年2月1日に確定している。したがって、控訴審には傷害等の各罪に関する部分だけが係属していたといえる。それにもかかわらず、原審が既に確定した外国人登録法違反の罪について審判を行い、判決を下したことは、係属していない事件を審理した違法がある。
結論
原審が控訴のなされなかった罪(外国人登録法違反)について審判したことは、審判対象の範囲を誤った違法があり、破棄を免れない。
実務上の射程
数罪が併合罪として処理される場合でも、判決で「別個の刑」が言い渡されているときは、一部上訴による確定の分離が認められることを示した事例である。答案上は、審判対象の確定(刑訴法348条・378条3号関連)の文脈で、不服申立ての範囲と確定の時期を論理的に切り分ける際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(あ)389 / 裁判年月日: 昭和33年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官以外の者が第一審判決に対し跳躍上告を行うためには、当該判決において法令が憲法に違反する等の積極的な違憲・違法の判断が示されており、かつその判断が不当であることを理由とする場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人が、高等裁判所による判決を経ることなく、地方裁判所、家庭裁判所または簡易裁判所の…
事件番号: 昭和30(あ)2532 / 裁判年月日: 昭和32年1月24日 / 結論: 棄却
原判決が懲役四月執行猶予三年の第一審判決を懲役三月罰金千円に変更したことが第一審判決の刑を重くしたことになるとしても、本件は検察官のみの控訴にかかる事件であるから、刑訴第四一一条を適用すべきものとは認められない。
事件番号: 昭和27(あ)6209 / 裁判年月日: 昭和28年9月25日 / 結論: その他
第一審で、起訴事実ABの中、Aは有罪となつたが、Bは無罪となり、検察官から無罪部分B事実に対してのみ控訴の申立があつたにもかかわらず、第二審で第一審判決を破棄自判するに当り、被告人よりの控訴もなかつたA事実についても審理し、ABを刑法第四五条前段の併合罪とし、これに対して一つの刑を言い渡したときは、右第二審判決は、何ら…