第一審で、起訴事実ABの中、Aは有罪となつたが、Bは無罪となり、検察官から無罪部分B事実に対してのみ控訴の申立があつたにもかかわらず、第二審で第一審判決を破棄自判するに当り、被告人よりの控訴もなかつたA事実についても審理し、ABを刑法第四五条前段の併合罪とし、これに対して一つの刑を言い渡したときは、右第二審判決は、何ら控訴がなく、従つて控訴審に係属していない事件について審判した違法があつて、刑訴第四一一条第一号により破棄を免れない。
刑訴第四一一条第一号にあたる一事例
刑訴法411条1号,刑訴法357条
判旨
控訴の申立てがないため原審に係属していない事件について審判をしたことは、判決に影響を及ぼす違法であり、破棄しなければ著しく正義に反する。
問題の所在(論点)
控訴の申立ての範囲外であり、原審に係属していない事実(第一審有罪部分)について審判を行った場合の法的性質と、上告審における取扱い(刑事訴訟法411条1号の該当性)が問題となる。
規範
控訴審における審判の対象は、控訴の申立てによって適法に上訴がなされ、移審の効力が生じた範囲に限定される。控訴の申立てがない事実について審判を行うことは、裁判所の審判権の範囲を逸脱し、当事者の申立てによらなければ裁判できないという不告不理の原則(刑事訴訟法上の訴訟条件)に抵触するため、判決に影響を及ぼす重大な違法となる。
重要事実
第一審判決は、窃盗等の事実につき無罪、別の窃盗の事実につき有罪を言い渡した。検察官は、第一審の無罪部分のみを不服として控訴を申し立てた。一方で、被告人からは第一審の有罪部分について控訴の申立てがなされた形跡はなかった。しかし、原審(控訴審)は、検察官が控訴した無罪部分だけでなく、控訴の対象外であった有罪部分についても併せて審判を行った。
あてはめ
本件では、検察官は無罪部分に限定して控訴を申し立てており、有罪部分については被告人からの控訴もない。したがって、有罪部分は原審に係属していない。それにもかかわらず原審がこの部分について審判をしたことは、何ら控訴がなく係属していない事件を裁いたことになり、審判権の範囲を誤った明白な違法がある。この違法は判決の結果に直接影響を及ぼすものであり、そのまま維持することは著しく正義に反すると認められる。
結論
原判決中、控訴の申立てがなく原審に係属していなかった事実に関する部分は、刑事訴訟法411条1号により破棄を免れない。
実務上の射程
控訴の範囲(刑訴法372条、373条等)や不告不理の原則を論じる際、審判の対象外の事実に踏み込んだ判決の違法性を基礎づける判例として活用できる。特に一部控訴における移審の範囲と審判の範囲を峻別する文脈で重要となる。
事件番号: 昭和26(あ)2110 / 裁判年月日: 昭和26年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条の上告理由において、原審で主張・判断されていない第一審判決の瑕疵を争うことや、検察官の処分の違法を直接争うことは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、第一審判決に瑕疵があること、および検察官の処分に違法があることを上告趣意として主張した。しかし、これらの点について原審(控訴…