判旨
被告人の控訴趣旨に主犯であることを否定する文言が含まれていても、全般的に量刑の不当を争う趣旨であれば、原判決が量刑不当として判断したことに判断遺脱の違法はない。
問題の所在(論点)
被告人が控訴趣旨において主犯であることを否定する供述をした場合、原審がこれを事実誤認の主張としてではなく、単なる量刑不当の主張として処理することは許されるか。控訴趣旨の解釈と判断遺脱の有無が問題となる。
規範
控訴趣旨の解釈にあたっては、書面中の特定の語句のみを切り出すのではなく、その全般的な記載内容から真に争おうとする対象を判断すべきである。書面全体として量刑の不当を主張する趣旨と解される場合には、その一部に事実関係を否定するような表現が含まれていても、裁判所は量刑の当否について判断すれば足りる。
重要事実
被告人Aは、控訴趣旨において「主犯として行ったことは一度もない心底です」との表現を用いた。しかし、控訴趣旨の全体的な文脈は、言い渡された懲役6年の刑が重すぎるとして、その軽減を求めるものであった。原審はこの控訴趣旨を量刑不当の主張として取り扱い、判決を下した。これに対し弁護人は、事実誤認の主張に対する判断を遺脱した違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件において被告人Aの控訴趣旨をみると、確かに「主犯として行ったことは一度もない」との文言が存在する。しかし、書面全体の趣旨を検討すれば、それは自らの関与の程度を強調することで、懲役6年という刑が重すぎることを争う文脈の中でなされたものといえる。したがって、実質的には量刑不当を主張する趣旨であると解するのが相当である。原判決がこの主張を量刑の問題として判断したことは、当事者の合理的な意思に合致しており、判断遺脱の違法は認められない。
結論
本件控訴趣旨は全体として量刑不当を争う趣旨と解されるため、原判決に判断遺脱の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
当事者の主張が不明確または多義的な場合における、裁判所の合理的な主張解釈の許容範囲を示す。答案上は、被告人の不利益な供述や弁解が、独立した事実誤認の主張(刑訴法382条)か、単なる量刑上の情状の主張(同381条)かを峻別する際の判断手法として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)1593 / 裁判年月日: 昭和28年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において控訴趣意として主張せず、かつ原判決が判断していない事項を上告理由とすることは、適法な上告理由にあたらない。 第1 事案の概要:被告人が、第一審手続における訴訟法違反(憲法37条1項違反を実質とするもの)を理由として上告を申し立てたが、当該事項は控訴審において控訴趣意として主張されてお…