第一審判決が被告人の犯罪事実の存在を確定せず無罪を言い渡した場合に、控訴裁判所が、みずから何ら事実の取調をすることなく、右判決を破棄し、訴訟記録および第一審裁判所において取り調べた証拠のみによつて、直ちに被告事件について犯罪事実の存在を確定し有罪の判決をすることは、刑訴第四〇〇条但書の許さないところである。
刑訴法第四〇〇条但書に違反する一事例
刑訴法400条,憲法31条,憲法37条
判旨
第一審の無罪判決を破棄して自ら有罪判決を言い渡す際、控訴裁判所が事実の取調べを行わず書面審理のみで犯罪事実を認定することは、刑訴法400条但書の解釈上許されない。また、不法入国した外国人であっても外国人登録法上の登録申請義務を負う。
問題の所在(論点)
1. 控訴裁判所が第一審の無罪判決を破棄して自ら有罪を言い渡す際、事実の取調べを行わず書面審理のみで犯罪事実を確定することは許されるか(刑訴法400条但書の解釈)。 2. 不法入国した外国人に外国人登録法上の登録申請義務があるか。
規範
1. 刑事訴訟法400条但書の規定に基づき、控訴裁判所が第一審の無罪判決(犯罪事実の確定がないもの)を破棄し、自ら有罪判決を言い渡す場合には、書面審理のみに留まらず、事実の取調べを行わなければならない。 2. 外国人登録法(旧外国人登録令を含む)上の登録申請義務は、不法に入国した外国人にも適用される。
重要事実
被告人は外国人登録証明書の交付申請をせずに本邦に在留していたとして、外国人登録法違反で起訴された。第一審は、被告人が密入国者であることを理由に、密入国事実の申告を強制できない(登録義務がない)との法律判断を示し、具体的な犯罪事実は確定せずに無罪を言い渡した。これに対し控訴審は、事実の取調べを行うことなく、第一審の記録と証拠のみに基づく書面審理によって第一審判決を破棄し、自ら被告人に懲役3年執行猶予1年の有罪判決を言い渡した。弁護人は登録義務の不存在を主張して上告した。
あてはめ
1. 刑訴法400条但書は、控訴裁判所が自ら判決をする(自判)ことができる旨を規定するが、判例によれば、第一審が犯罪事実を確定せずに無罪とした場合に、控訴審が事実の取調べを一切せずに記録のみで犯罪事実を認定することは、適正な刑事手続の観点から許されない。本件原審は、被告人の犯罪事実の存在を確定していない一審判決を破棄し、事実の取調べをした形跡がないまま自ら有罪を言い渡しており、手続上の違法がある。 2. 外国人登録制度の趣旨に照らせば、不法入国者であっても登録義務を免れるものではないとする大法廷判例の法理は、本件外国人登録法の解釈においても維持されるべきである。
結論
原判決を破棄し、事実の取調べを行わせるため本件を控訴審へ差し戻す。不法入国者に登録義務がないとする主張は採用できないが、控訴審が無取調べで有罪自判した手続は違法である。
実務上の射程
控訴審における「逆転有罪」の限界を示す重要判例。第一審が実体的な事実認定を行わずに無罪とした場合、控訴審が新たに事実認定を行って有罪とするには、直接主義・口頭弁論主義の観点から独自の事実取調べが必須となる。答案上は、控訴審の自判権(刑訴法400条)の限界として論述する。
事件番号: 昭和33(あ)389 / 裁判年月日: 昭和33年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官以外の者が第一審判決に対し跳躍上告を行うためには、当該判決において法令が憲法に違反する等の積極的な違憲・違法の判断が示されており、かつその判断が不当であることを理由とする場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人が、高等裁判所による判決を経ることなく、地方裁判所、家庭裁判所または簡易裁判所の…