原判決が懲役四月執行猶予三年の第一審判決を懲役三月罰金千円に変更したことが第一審判決の刑を重くしたことになるとしても、本件は検察官のみの控訴にかかる事件であるから、刑訴第四一一条を適用すべきものとは認められない。
検察官のみの控訴にかかる事件で第一審判決より重い刑を言渡すことと刑訴法第四一一条。
刑訴法402条,刑訴法411条
判旨
検察官のみが控訴した事件において、控訴審が第一審の懲役刑を、懲役刑に罰金刑を併科する刑に変更し、実質的に第一審より重い刑を科したとしても、不利益変更禁止の原則(刑事訴訟法402条)は適用されない。
問題の所在(論点)
検察官のみが控訴した事件において、控訴審が第一審よりも重い刑を言い渡すことが、不利益変更禁止の原則(刑事訴訟法402条)に抵触し、刑の不当な加重として違法となるか。
規範
不利益変更禁止の原則(刑事訴訟法402条)は、被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件について、原判決の刑より重い刑を言い渡すことができないとするものである。したがって、検察官のみが控訴を申し立てた事件については、同条の適用はなく、控訴審は第一審よりも重い刑を言い渡すことが可能である。
重要事実
第一審判決が被告人に対し「懲役4月、執行猶予3年」を言い渡した。これに対し、検察官のみが控訴を申し立てたところ、原判決(控訴審)は第一審判決を変更し、「懲役3月及び罰金1000円」を言い渡した。弁護人は、これが第一審の刑よりも重く変更されたものであり違法であるとして上告した。
あてはめ
刑事訴訟法402条の文言上、不利益変更禁止の原則が適用されるのは「被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件」に限定されている。本件は検察官のみが控訴を申し立てた事件である。したがって、原判決が第一審の「懲役4月、執行猶予3年」から「懲役3月、罰金1000円」へと変更し、仮にこれが第一審より重い刑への変更に該当するとしても、同条に違反するものではない。
結論
検察官のみの控訴にかかる事件である以上、不利益変更禁止の原則は適用されず、刑の変更は適法である。
実務上の射程
不利益変更禁止の原則の適用範囲を画する基礎的な判例である。答案上は、まず控訴申立人が誰であるかを確認し、検察官控訴の場合には同原則の適用を否定する根拠として本法理を用いる。また、自由刑から自由刑と財産刑の併科への変更が『不利益』に該当するかという評価の前段階で、そもそも適用場面か否かを峻別する際に有用である。
事件番号: 昭和33(あ)389 / 裁判年月日: 昭和33年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官以外の者が第一審判決に対し跳躍上告を行うためには、当該判決において法令が憲法に違反する等の積極的な違憲・違法の判断が示されており、かつその判断が不当であることを理由とする場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人が、高等裁判所による判決を経ることなく、地方裁判所、家庭裁判所または簡易裁判所の…