判旨
上訴権回復の申立てにおいて、被告人が現実に判決の言渡しを知り得なかったとしても、それが被告人やその代理人の責めに帰すべき事由によらないものでない限り、上訴権を回復することはできない。
問題の所在(論点)
上訴権回復の申立て(刑訴法362条)において、被告人が現実に判決の言渡しを知り得なかったことが「被告人及びその代理人の責めに帰すべからざる事由」にあたると主張する場合に、これが刑訴法405条の特別抗告の理由となるか。
規範
刑事訴訟法第362条に基づく上訴権回復の要件である「被告人又は上訴申立人が、その責めに帰することができない事由により、上訴の期間内に上訴をすることができなかったとき」に該当するか否かは、単に形式的に判決を知り得る機会があったか否かだけでなく、現実に知り得なかった事情が被告人等の責めに帰すべきか否かによって判断される。
重要事実
抗告人は、被告人が刑の言渡しを現実に知り得なかったことについて、被告人及びその代理人の責めに帰すべからざる事情があったと主張して、上訴権の回復を求めた。しかし、原決定は、被告人に形式的な告知の機会があったことを理由にこれを棄却し、抗告人がこれを不服として特別抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
抗告人の主張は、現実に判決を知り得なかったことが自己の責めに帰すべきではないという点にある。しかし、最高裁判所は、このような主張は刑事訴訟法405条に規定される憲法違反や判例違反といった上告理由(特別抗告においては433条・405条準用)に該当しないと判断した。すなわち、具体的な帰責事由の有無に関する事実誤認の主張にとどまるものは、適法な抗告理由を構成しない。
結論
本件特別抗告は刑訴法405条所定の理由に当たらないため、棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(し)50 / 裁判年月日: 昭和27年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法362条の「自己の責に帰することができない事由」の存否について、裁判所が期待可能性の有無に言及せずとも、法定期間内に控訴しなかったことが本人の責任によると認定していれば、判例違反には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、有価証券偽造行使、詐欺、同未遂の各被告事件について第一審判決を受…
上訴権回復の判断において、実質的な帰責事由の有無が問われることを示唆しつつも、その具体的な事実認定の当否については、憲法違反等の重大な事由がない限り特別抗告の対象とはならないことを示す。答案上は、362条の「責めに帰することができない事由」の検討において、形式的な機会だけでなく実質的な不知の経緯が考慮され得る点を確認する際に参照する。
事件番号: 昭和42(す)270 / 裁判年月日: 昭和42年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の要件である「自己又は代人の責に帰することができない事由」とは、不服申立方法の誤信といった主観的な事情は含まれず、外部的な障害や不可抗力による期間の徒過を指す。 第1 事案の概要:被告人は詐欺被告事件の上告棄却決定を受けたが、異議申立期間を徒過した。被告人は、当該決定に対する不服申立方法…
事件番号: 昭和28(し)12 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
刑訴第四三五条第六号に基く再審の請求にあたり、あらたに発見した証拠として証人の取調を求めている場合でも、その再審の請求が理由があるかどうかを判断するために、その証人の取調をするか、又はこれをしないで、趣意書に添えた証拠書類等及び確定事件記録につき必要と認める調査をするにとどめ、あるいはさらにその証人の取調以外の方法によ…
事件番号: 昭和28(し)18 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法が適用される事件において、高等裁判所の決定に対し最高裁判所へ抗告をすることは、訴訟法において特に認められた場合を除き許されない。 第1 事案の概要:申立人は、東京高等裁判所が下した再審請求棄却決定を不服として、最高裁判所に対して抗告を申し立てた。本件は刑訴施行法2条に基づき旧刑事訴訟法…
事件番号: 昭和28(し)20 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の請求が認められるためには、被告人が自ら上訴手続をとり得ない程度の病状等にあることを要し、単なる病状の存在のみでは足りない。 第1 事案の概要:被告人は、上告提起期間内に上告手続をとらなかった。その後、当時の病状により手続が不可能であったとして上訴権回復の請求を申し立てた。原審は、被告人…