判旨
単独での強姦により傷害を生じさせた後、別の者と共謀して更に強姦を行った場合、後者の共同正犯関係は前者の単独犯による結果を当然には承継しない。
問題の所在(論点)
先行する単独犯による傷害結果がある場合において、その後に成立した共同正犯の範囲に当該傷害結果が含まれるか。いわゆる承継的共同正犯の成否が問題となる。
規範
先行する単独の実行行為によって既に結果(傷害)が発生している場合、その後に共謀して共同実行に及んだとしても、特段の事情がない限り、共謀前の先行行為から生じた結果についてまで共同正犯としての責任を負うものではない。
重要事実
被告人Aは、まず単独で被害者を強姦し、処女膜裂傷の傷害を負わせた。その直後、被告人Aは相被告人Bと共謀の上、共同して被害者に暴行を加えて反抗を抑圧し、Bが姦淫行為に及んだ。
あてはめ
本件では、Aが単独で強姦を行い傷害を生じさせた行為と、その後のA・B間の共謀に基づく共同強姦行為は、時間的には近接している。しかし、処女膜裂傷という傷害はAの単独行為時に既に発生しており、その後のBとの共謀は、既に発生した傷害結果を前提とした別の暴行・姦淫を目的とするものである。したがって、後行の共謀関係が、先行するAの単独行為にまで遡及して責任を負わせる根拠とはならない。
結論
A単独の傷害結果を、後のBとの共謀に基づく共同正犯の範囲に含めることはできず、Aについては単独の強姦致傷罪、Bについてはその後の暴行・姦淫の限度で責任を負う(本件では上告棄却)。
実務上の射程
承継的共同正犯を否定する基本的立場を示す。特に傷害致死傷罪等において、先行者が生じさせた結果を後行者が認識しつつ利用したとしても、後行者の関与前の行為について責任を負わないとする実務の論理(因果関係の欠如)を補強する事案である。
事件番号: 昭和24(れ)1530 / 裁判年月日: 昭和24年10月8日 / 結論: 棄却
本件強姦は、所論六名の者の通謀行爲であることは、原判決舉示の證據である原審公判廷における右六名の供述として、一人が姦淫している間他の者等はそれぞれ被害者の手足を押えた上、順次全員において輪姦した旨の供述によつて寔に明らかなところである。しからば本件強姦致傷の結果については、右六名中の何人がこれを與へたかについては明確で…