強姦に際し婦女に傷害の結果を与えれば、姦淫が未遂であつても強姦致傷罪の既遂となり、強姦致傷罪の未遂という観念を容れることはできない。従つて中止未遂の問題も生じ得ないわけである。(昭和二四年(れ)第九三三号、同年七月一二日第三小法廷判決、判例集三巻八号一二三七頁参照)
強姦致傷罪の未遂。
刑法181条
判旨
強姦の手段たる暴行等により婦女に傷害を負わせた場合、姦淫が未遂であっても強姦致傷罪の既遂が成立する。したがって、強姦致傷罪には未遂という観念は存在せず、中止未遂の規定が適用される余地もない。
問題の所在(論点)
強姦の手段としての暴行等により婦女を負傷させた場合、姦淫が未遂であっても強姦致傷罪(現:強制性交等致死傷罪)の既遂が成立するか。また、その場合に強姦致傷罪の未遂や中止未遂を認める余地があるか。
規範
結果的加重犯である強姦致傷罪においては、基本行為である強姦の手段たる暴行・脅迫等によって傷害という重い結果が発生した以上、基本行為の目的である姦淫が既遂に達したか否かを問わず、同罪の既遂が成立する。この場合、強姦致傷罪の未遂は観念できない。
重要事実
被告人4名が、婦女に対して強姦を試みた際、その手段としての暴行により被害者に傷害の結果を生じさせた。しかし、姦淫行為自体は完了せず、未遂に終わった。弁護人は、姦淫が未遂であることや犯行当時の精神状態を理由に、強姦致傷罪の未遂や中止未遂の成立、あるいは量刑の不当を主張して上告した。
あてはめ
本件では、被告人らが婦女に対し強姦に際して傷害の結果を与えたことが認められる。強姦致傷罪は傷害の結果が発生した時点で既遂となる結果的加重犯としての性質を有するため、たとえ目的とした姦淫が未遂であったとしても、既に傷害の結果が発生している以上、罪名としては強姦致傷罪の既遂として処断される。したがって、基本行為の未遂を理由に減軽を求める中止未遂(刑法43条但書)の問題も生じない。
結論
強姦に際し婦女に傷害の結果を与えれば、姦淫が未遂であっても強姦致傷罪の既遂となり、強姦致傷罪の未遂という観念を容れることはできない。中止未遂も成立しない。
実務上の射程
結果的加重犯における既遂・未遂の区別に関する重要判例である。現行の強制性交等致死傷罪(181条2項)でも同様の理論が維持されており、答案上は『重い結果が発生している以上、基本行為の既遂・未遂を問わず、結果的加重犯の既遂が成立する』という論理で使用する。中止未遂の主張に対する反論として極めて有用である。
事件番号: 昭和28(あ)4384 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強姦の過程で生じた処女膜粘膜剥脱等の軽微な損傷であっても、刑法上の「傷害」に該当し、強姦致傷罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人が被害者に対して強姦行為に及んだ際、その過程で被害者に対し、処女膜粘膜剥脱等の損傷を負わせた。弁護人は、当該損傷は軽微であり、強姦致傷罪における「致傷(傷害)」には当…