判旨
芸妓と使用主との間には雇用関係が認められ、芸妓への職業紹介に際して許可なく手数料を徴収する行為には職業安定法第32条第1項が適用される。
問題の所在(論点)
芸妓と使用主との間に雇用関係が認められ、その紹介について職業安定法第32条第1項(有料職業紹介事業の禁止・制限)が適用されるか。
規範
職業安定法における有料職業紹介事業の制限規定の適用にあたっては、対象となる労働者と使用主との間に実質的な雇用関係が認められるか否かによって判断すべきである。
重要事実
被告人が、芸妓と使用主との間の就職を斡旋するにあたり、行政庁の許可を受けることなく手数料を徴収した事案である。原審は、本件芸妓と使用主との間に雇用関係があることを前提に、被告人の行為が職業安定法に違反すると判断した。被告人側はこれを法令違反であるとして上告した。
あてはめ
最高裁判所は、先行する判例(最判昭和29年3月2日)を引用し、芸妓と使用主との間に雇用関係が存在すると認定した原審の判断を正当とした。芸妓は単なる独立した個人事業主ではなく、使用主の指揮命令下に置かれ、労務を提供する労働者としての性格を有するため、その斡旋は職業安定法上の「職業紹介」に該当すると評価される。
結論
本件芸妓と使用主との間には雇用関係があり、職業安定法第32条第1項が適用される。したがって、無許可での有料紹介行為は同法違反となる。
実務上の射程
労働者性の判断において、形式的な職種(芸妓等)にとらわれず、実質的な指揮命令系統や従属性から雇用関係を認めるべき実務上の指針となる。答案上は、職業安定法の適用の前提となる「労働者」の意義や「雇用関係」の存否を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4787 / 裁判年月日: 昭和30年10月4日 / 結論: 棄却
職業安定法にいう職業紹介とは、求人および求職の申込を受けて本人者と求職者の間に介在し、両者間における雇用関係成立のための便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為を指称し、必ずしも、雇用関係の現場にあつて直接これに関与介入するのは要はないと解すべきである。