控訴が、裁判の一部に対して為されたものか、それとも全部に対して為されたものかは、控訴申立書(控訴趣意書でなく)によつて、判断されるべきことである。
控訴の範囲は何によつて判断すべきか
刑訴法357条,刑訴法374条,刑訴法376条,憲法39条
判旨
第一審判決に有罪部分と無罪部分がある場合、控訴申立書により判決の全部に対して控訴がなされたと認められるときは、無罪部分も含めて確定せず上訴審に係属し、憲法39条の二重処罰禁止には抵触しない。
問題の所在(論点)
第一審判決の一部に無罪がある場合に、判決全体を対象とする控訴がなされたとき、無罪部分が確定したものとして憲法39条(二重処罰の禁止)の適用を受けるか。すなわち、控訴による審判の範囲と判決の確定時期が問題となる。
規範
第一審判決の一部に無罪が含まれる場合であっても、控訴申立書において判決の全部に対して不服が申し立てられたと認められるときは、判決全体が未確定のまま上訴審に移行する。この場合、被告人が一度無罪判決を受けたことを根拠に、同一の罪について重ねて処罰を禁じる憲法39条に違反することはない。
重要事実
第一審において、被告人に対する判決の一部に無罪部分が含まれていた。これに対し、検察官または被告人側(本件では不明だが文脈上は控訴提起側)が控訴を提起した際、提出された控訴申立書の記載内容から、判決の全部に対して不訴の申し立てがあったものと認定された。弁護人は、無罪部分が確定していることを前提に、その後の手続が憲法39条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件における控訴申立書の記載によれば、第一審判決の「全部」に対して控訴の申し立てがあったと認められる。したがって、無罪部分も含めて判決は確定しておらず、上訴審の審判対象に含まれている。一度確定した裁判について再度審理するものではないため、憲法39条が禁止する二重処罰の危険にはさらされていないと解される。
結論
第一審判決の全部に対して適法な控訴がなされた以上、無罪部分が確定したことを前提とする憲法39条違反の主張は前提を欠き、採用できない。
実務上の射程
実務上、一部無罪・一部有罪の判決に対して「全部」を対象として控訴した場合、判決全体の確定が遮断されることを確認するものである。答案上は、上訴の範囲や客観的不可分の原則、および憲法39条の「確定」の意義を論じる際の補強材料として機能する。
事件番号: 昭和38(あ)542 / 裁判年月日: 昭和38年8月23日 / 結論: 棄却
第一審判決が、併合罪として起訴された被告人の延三二名に対する三二回、合計四二万円の供与、交付の公職選挙法違反行為につき、全部有罪としたところ、原判決が右起訴事実中一名に対する一回、一万円の交付について無罪と認めながら、右第一審判決の事実誤認、法令適用の誤は判決に影響を及ぼさないとして控訴を棄却したときは、原判決には判決…