判旨
控訴審において、自ら事実の取調べを行った上で第一審の無罪判決を破棄し有罪判決を自判することは、直接審理主義や口頭弁論主義の原則に反せず、憲法31条及び37条2項に適合する。
問題の所在(論点)
第一審の無罪判決を控訴審が破棄し、自ら事実取調べを行った上で有罪を言い渡すこと(刑訴法400条但書による自判)が、憲法31条(適正手続)、37条2項(証人審問権等)、および刑事訴訟法の基本原則である直接審理主義・口頭弁論主義に反しないか。
規範
刑訴法400条但書に基づき、控訴審が自ら事実の取調べを行う場合には、第一審の無罪判決を破棄して被告人に有罪を言い渡す(自判)ことができる。この手続は、憲法31条が保障する適正手続や、同37条2項が保障する被告人の権利を侵害するものではなく、直接審理主義および口頭弁論主義の原則に何ら抵触するものではない。
重要事実
第一審で無罪判決を受けた被告人に対し、検察官が控訴した事案において、控訴審(原審)は自判のために必要な事実の取調べを独自に実施した。その結果、原審は第一審の無罪判決を破棄し、自ら有罪の判決を下した。これに対し被告人側は、控訴審による無罪から有罪への自判は、直接審理主義等の原則に反し違憲であるとして上告した。
あてはめ
本件において、原審(控訴審)は公訴事実について自判を行うために必要な事実の取調べを記録上明らかに実施している。控訴審が自ら証拠調べを行い、直接証拠に接した上で心証を形成している以上、一審の判断を覆して有罪を認定したとしても、それは適正な手続に基づくものである。したがって、第一審の無罪判決を破棄して有罪を自判するプロセスに憲法上・訴訟法上の違法は認められない。
結論
控訴審が自ら事実取調べを行った上で無罪判決を破棄し有罪を自判することは合憲であり、適法である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審の事後審的性格と事実取調べの許容範囲に関する基本判例である。答案上では、控訴審の破棄自判の可否が問われた際、刑訴法400条但書の解釈として、憲法上の諸原則に反しない旨を記述する際の根拠として用いる。ただし、現在では「破棄自判」よりも「破棄差戻し」が原則的な運用とされる場面も多いため、事実取調べの充実度との兼ね合いで言及すべきである。
事件番号: 昭和34(あ)2076 / 裁判年月日: 昭和35年5月31日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所が第一審の無罪判決を破棄して自ら有罪判決を言い渡す場合、書面審理のみによって事実を確定することは許されず、事実の取調べを行う必要がある。 第1 事案の概要:被告人は第一審において犯罪事実の存在が確定されず無罪判決を受けた。これに対し、控訴審(原審)は、第一審判決を破棄した上で、自ら罰金一…