弁護人の上告趣意は、違憲をいう点があるけれども、仮に本件解散が憲法に違反し法律上無効であつたからといつて、衆議院議員選挙における公職選挙法違反の罪が成立しないことはない。所論は違憲論の前提を欠き(昭和二八年(あ)四四三〇号同二九年四月二二日第一小法廷判決参照)刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
解散の無効と公職選挙法違反罪の成否
公職選挙法221条,憲法7条
判旨
衆議院の解散が憲法に違反し法律上無効であったとしても、その後に実施された衆議院議員選挙における公職選挙法違反の罪が不成立となることはない。
問題の所在(論点)
衆議院の解散が憲法に違反し法律上無効である場合、当該解散に基づいて施行された衆議院議員選挙における公職選挙法違反の罪が成立するか(解散の効力と選挙犯罪の成否)。
規範
衆議院の解散という統治上の政治的行為の有効性と、その結果実施される選挙手続において個人の刑事責任(公職選挙法違反)を問うことの可否は別個の論理として峻別される。解散の効力がいかなる状態であれ、現に実施されている選挙秩序を害する犯罪行為の成立は妨げられない。
重要事実
被告人は、衆議院議員選挙の過程において公職選挙法違反の罪に問われた。これに対し弁護人は、当該選挙の前提となった衆議院の解散自体が憲法に違反し無効であるから、その解散に基づく選挙において犯罪は成立しない旨を主張し、上告した。
あてはめ
仮に弁護人が主張するように本件解散が憲法に違反し法律上無効であったと想定しても、その事実は公職選挙法違反の罪の成否に直接影響を及ぼすものではない。刑事罰の対象となるのは、現に施行されている選挙の公正確保という法益を侵害する行為であり、解散の憲法上の瑕疵は、当該選挙手続内で行われた犯罪行為の違法性を阻却し、あるいは構成要件を消滅させる理由にはならない。
結論
衆議院解散の効力いかんにかかわらず、公職選挙法違反の罪は成立する。したがって、違憲論を前提とする被告人の主張は上告理由に当たらない。
実務上の射程
統治行為論の文脈で語られることが多いが、本判決は政治的事象の有効性と刑事罰の帰属性を切り離して判断している点に特徴がある。答案上は、選挙無効訴訟などの行政訴訟上の論理と、個人の刑事責任の追及を混同してはならないという文脈で活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)133 / 裁判年月日: 昭和29年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】衆議院の解散が無効であり、それに伴い実施された選挙が法律上効力を持たない場合であっても、当該選挙において行われた公職選挙法違反罪の刑事責任は免れない。 第1 事案の概要:被告人は衆議院議員総選挙において、公職選挙法に違反する行為(具体的な行為態様は判決文からは不明)に及んだとして起訴された。これに…