単に公判期日を変更する場合の如きその公判期日において事実の審理をする訳ではないからたとえ判事の更迭があつても公判手続を更新する必要はないと認めるのが相当である。
裁判官の更迭があつても公判手続を更新する必要のない場合
刑訴法315条,刑訴法276条
判旨
公判期日を変更するだけの手続は、その期日において実質的な証拠調べ等の審理を行うものではないため、裁判官の更迭があった場合でも公判手続を更新する必要はない。
問題の所在(論点)
裁判官の更迭があった場合、実体的な審理を行わない「公判期日の変更」手続であっても、刑事訴訟法315条に基づく公判手続の更新が必要となるか。
規範
刑事訴訟法315条が規定する「公判手続の更新」は、直接主義・口頭主義の観点から、裁判官が交代した際にそれまでの審理内容を把握し直すために行われるものである。したがって、単に公判期日を変更する手続のように、実体的な事実の審理(証拠調べや弁論等)を伴わない手続については、裁判官の更迭があっても更新手続を要しない。
重要事実
被告人の刑事事件において、公判期日を変更する手続が行われた際、裁判官の更迭(交代)が生じていた。弁護人は、このような場合にも公判手続の更新が必要であるにもかかわらず、これを行わなかったことは訴訟手続の規定に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において行われたのは単なる公判期日の変更である。公判期日の変更は、その期日において実事の審理(証拠調べ等)をするわけではない。更新手続の趣旨は、心証を形成する主体である裁判官が交代した際に審理の連続性を確保することにあるが、実体的な審理を行わない場面では、裁判官の交代が心証形成に影響を及ぼす余地がない。ゆえに、本件のような期日変更に際しては更新手続を行う必要はないと解される。
結論
公判期日の変更のみを行う場合には、裁判官の更迭があっても公判手続を更新する必要はない。したがって、本件の訴訟手続に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法315条本文の「更迭」に伴う更新義務の例外(範囲)を画定する際、実質的審理の有無を基準にするという考え方を示す。答案上は、実体的な証拠調べに入る前の形式的な手続や、期日指定等の付随的手続においては更新が不要であることの根拠として利用できる。
事件番号: 昭和28(あ)1220 / 裁判年月日: 昭和29年7月14日 / 結論: 棄却
裁判官が、かわつたことにより公判手続を更新した場合には、公判調書にその旨を記載すれば足り、更新前の公判調書、証拠書類および証拠物等について証拠の標目、その取調の順序を記載する必要はない。註。本件は簡易裁判所から地方裁判所え移送のあつた場合である。