裁判官が、かわつたことにより公判手続を更新した場合には、公判調書にその旨を記載すれば足り、更新前の公判調書、証拠書類および証拠物等について証拠の標目、その取調の順序を記載する必要はない。註。本件は簡易裁判所から地方裁判所え移送のあつた場合である。
公判手続の更新と公判調書の記載
刑訴法48条,刑訴法315条,刑訴法332条,刑訴規則44条,刑訴規則213条の2
判旨
事件の移送を受けた裁判所が裁判官の更迭による公判手続の更新を行った場合、更新前の公判手続は同一の手続として承継されるため、改めて証拠の標目等を公判調書に記載する必要はない。
問題の所在(論点)
事件の移送を受け、裁判官の更迭による公判手続の更新(刑事訴訟法315条)が行われた場合において、移送前および更新前の証拠関係を改めて公判調書に記載する必要があるか。
規範
刑事訴訟法に基づく裁判官の更迭による公判手続の更新が行われた場合、更新により移送前の公判においてなされた公判手続も、更新後の裁判所における同一の手続が行われたものとみなされる。したがって、更新前の公判調書、証拠書類および証拠物等について、更新後の公判調書に証拠の標目や取調順序を改めて再記載する必要はない。
重要事実
被告人に対する事件が仙台簡易裁判所に繋属していたが、同裁判所は刑訴法332条に基づき仙台地方裁判所に移送した。地裁はこれを受理し、既に繋属中の他事件と併合審理する決定をした。その際、裁判官の更迭に伴い公判手続の更新が行われたが、地裁の公判調書には更新前の証拠標目等が再記載されていなかったため、弁護人が手続の違法を主張して上告した。
あてはめ
本件では、記録によれば裁判官の更迭による公判手続の更新が適法に行われている。この更新により、移送前の公判における手続は、更新後の手続と一体のものとして認められる。よって、更新前の公判調書や証拠書類等が既に存在している以上、それらを改めて更新後の公判調書に証拠の標目として網羅的に記載したり、取調の順序を再掲したりする必要はないと解される。
結論
移送後の裁判所において公判手続の更新がなされた以上、更新前の証拠関係を公判調書に再記載しなくとも手続に違法はない。
実務上の射程
裁判官の更迭に伴う更新手続の事務的負担に関する判示である。実務上、更新の際には改めて証拠調べの内容を顕出させる必要があるが(刑訴規則213条の2参照)、本判決は公判調書の記載整理の観点から、前審・更新前の記録の連続性を認めたものといえる。
事件番号: 昭和40(あ)1064 / 裁判年月日: 昭和40年12月2日 / 結論: 棄却
本件のように単に公判期日を変更するに止まるような場合には、開廷後裁判官がかわつたときでも、公判手続を更新する必要はないと解すべきである。(昭和二九年(あ)第一〇三四号同二九年六月一六日第二小法廷決定、裁判集九六号二五三頁参照)