判旨
公判調書において、裁判官が更新された場合であっても、当該公判に列席した裁判官の氏名を記載すれば足り、裁判所の構成に変更があった旨を特記する必要はない。
問題の所在(論点)
裁判官が交代した際の公判調書の記載において、列席した裁判官の氏名以外に「裁判所の構成に変更があった旨」を記載する必要があるか。刑事訴訟規則等に基づく調書の正確性の要件が問題となる。
規範
刑事訴訟法上の公判調書の記載事項として、裁判官が交代した際であっても、当該公判手続に現に列席した裁判官の官職及び氏名が正しく記載されていれば足りる。これを超えて、裁判所の構成に変更が生じたこと(いわゆる更新の事実)自体を明示的に記載することまでは、法律上要求されない。
重要事実
被告人の公判において裁判官の交代(裁判所の構成の変更)があった。作成された公判調書には、当該公判に実際に列席した裁判官の官氏名は記載されていたが、裁判官が交代した旨や構成に変更があった旨の明文の記載はなかった。これに対し弁護人は、構成変更の旨の記載がないことが訴訟法違反にあたるとして上告した。
あてはめ
刑事訴訟法及び関係規則に基づき公判調書の記載を検討すると、調書は各公判期日の手続を記録するものである。本件において、公判調書には当該公判に実際に列席した裁判官の官氏名が記載されている。裁判官の交代という事実は、前後の調書を照らし合わせれば判明する客観的事実であり、当該期日の調書内に「構成に変更があった」との説明的文言をあえて記載しなくとも、適式に列席者の表示がなされている以上、法的な不備はないといえる。
結論
裁判所の構成に変更があった旨を公判調書に記載する必要はなく、訴訟法違反は認められない。
実務上の射程
公判手続の更新(刑訴法315条)に関連して、調書の記載要件の限界を示したもの。実務上、調書の形式的正確性が争点となった際の否定根拠として活用できるが、更新手続自体が適正に行われたか否かは別問題である点に注意を要する。
事件番号: 昭和29(あ)3576 / 裁判年月日: 昭和30年5月12日 / 結論: 棄却
公判調書に裁判所書記官の署名があるだけで、その押印を欠いていても、右裁判所書記官がこれを作成したものと認められる場合は、その公判調書は有効である。