本件のように単に公判期日を変更するに止まるような場合には、開廷後裁判官がかわつたときでも、公判手続を更新する必要はないと解すべきである。(昭和二九年(あ)第一〇三四号同二九年六月一六日第二小法廷決定、裁判集九六号二五三頁参照)
単に公判期日を変更する場合と公判手続更新の要否。
刑訴法276条,刑訴法315条
判旨
開廷後に裁判官が交代した場合であっても、実体に関する審理を行わず公判期日の変更のみを合議・決定するような局面では、刑訴法315条の公判手続の更新を要しない。
問題の所在(論点)
公判期日の変更のみを行う手続において、裁判官が交代した場合、刑訴法315条に基づく公判手続の更新が必要か。
規範
刑訴法315条が公判手続の更新を要求する趣旨は、直接主義・口頭主義の観点から、判決の基礎となる証拠調べ等の実体審理に直接接していない裁判官が判断に関与することを防ぐ点にある。したがって、事案の実体に関する審理を行うことなく、単に公判期日を変更するに止まるような手続においては、裁判官が交代した場合であっても公判手続を更新する必要はない。
重要事実
被告人の刑事事件において、公判が開廷されたが、その際、以前の公判に関与していた裁判官が交代していた。当該期日において裁判所は、事案の実体に関する証拠調べや弁論等の審理を一切行わず、単に次回の公判期日を変更する旨の決定を行うに止まった。弁護人は、裁判官の交代があるにもかかわらず手続の更新がなされなかったことは憲法32条や訴訟法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において行われた手続は、記録によれば単に公判期日を変更するに止まるものであった。このような期日の変更は、被告人の犯罪事実の存否や量刑の基礎となる実体的な証理を伴うものではない。そうであれば、裁判官が交代したとしても、前任の裁判官による審理内容を改めて確認(更新)して心証を形成し直す必要性は乏しい。したがって、本件のような状況下では、更新手続を経ずに期日の変更手続を進めることは、適法な訴訟手続の範囲内であるといえる。
結論
事案の実体に関する審理を行わず、単に公判期日の変更のみを行う場合には、裁判官が交代しても公判手続を更新する必要はない。したがって、本件の上告は棄却される。
実務上の射程
裁判官の交代による更新(刑訴法315条)の例外を認めた判例である。答案上では、更新手続の趣旨(直接主義・口頭主義)から説き起こし、「実体審理を伴わない形式的な手続」に限定して更新不要とする論理として活用できる。ただし、証拠調べが少しでも介在する場合は本判例の射程外となる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和27(あ)6165 / 裁判年月日: 昭和28年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が交代した後に従前の裁判官が復帰して公判に関与する場合、中間の公判期日が単なる期日変更手続に過ぎないときは、刑事訴訟法315条の弁論の更新を要しない。 第1 事案の概要:第一審の第1回公判に出廷した裁判官が、第2回公判においては別の裁判官に代わっていたが、第2回公判では単に期日の変更手続がな…