判旨
裁判官が交代した後に従前の裁判官が復帰して公判に関与する場合、中間の公判期日が単なる期日変更手続に過ぎないときは、刑事訴訟法315条の弁論の更新を要しない。
問題の所在(論点)
公判期日によって列席裁判官が異なる場合、実質的な審理が行われていない期日の後に元の裁判官が復帰した際、刑事訴訟法315条に基づく「弁論の更新」を行う必要があるか。
規範
刑事訴訟法315条本文が裁判官の交代により弁論の更新を求めている趣旨は、直接主義・口頭主義の観点から、判決をする裁判官が直接証拠を調べ心証を形成することにある。したがって、一時的に異なる裁判官が列席したとしても、それが単なる期日の変更等の実質的な審理を伴わない手続に過ぎず、判決に関与する裁判官がそれ以前の公判において直接審理に関与していたのであれば、同条の「裁判官が代わつたとき」には当たらず、弁論の更新は不要である。
重要事実
第一審の第1回公判に出廷した裁判官が、第2回公判においては別の裁判官に代わっていたが、第2回公判では単に期日の変更手続がなされたに過ぎなかった。その後、第3回公判において、再び第1回公判と同一の裁判官が列席して開廷された。
あてはめ
本件では、第1回公判に出廷した裁判官が、第3回公判において同一の構成で列席している。中間の第2回公判においては裁判官が異なっているものの、そこでは「単に期日の変更手続がなされたに過ぎない」と認められる。そうであれば、実質的な証拠調べや弁論等の審理は中断されておらず、判決を行う裁判官の直接的な心証形成に支障はないといえる。ゆえに、実質的な意味で裁判官が交代したとはいえず、弁論を更新すべき義務はないと解される。
結論
弁論の更新を必要としない。したがって、更新手続を経ずに審理を継続した第一審の手続に違法はない。
実務上の射程
裁判官の交代による更新(刑訴法315条)の要否に関する判断基準を示す。期日指定や延期など、証拠調べを伴わない形式的な手続のみが行われた期日に別の裁判官が関与したとしても、実質的な審理を継続する裁判官が同一であれば、更新は不要とする実務運用を支える判例である。
事件番号: 昭和25(あ)3144 / 裁判年月日: 昭和27年5月6日 / 結論: 棄却
本件第一審第一回公判の裁判官は、高橋正男であり、同第二回公判の裁判官は山本寛であつたことは所論のとおりである。しかし、第一回公判は被告人不出頭のため公判手続がなされなかつたのである、しかして刑訴三一五条の開廷後とは、公判手続即ち事件審理の手続開始後という意味に解すべきであることは、同条の規定が口頭弁論主義に基く要請であ…