本件第一審第一回公判の裁判官は、高橋正男であり、同第二回公判の裁判官は山本寛であつたことは所論のとおりである。しかし、第一回公判は被告人不出頭のため公判手続がなされなかつたのである、しかして刑訴三一五条の開廷後とは、公判手続即ち事件審理の手続開始後という意味に解すべきであることは、同条の規定が口頭弁論主義に基く要請であることから当然である。従つて第一審第二回公判で公判手続の更新がなかつたとて違法はない。(昭和一〇年一一月一一日大審院判決集一四巻一一六八頁参照。)
刑訴三一五条の更新を要しない例――第一審第二回公判で裁判官がかわつても第一回公判の手続が被告人不出頭のため開始されなかつた場合
刑訴法315条
判旨
刑事訴訟法315条の「開廷後」とは公判手続(事件審理の手続)の開始後を意味し、被告人の不出頭により手続が開始されなかった場合は、裁判官が交代しても公判手続の更新を要しない。
問題の所在(論点)
被告人が不出頭で審理が開始されなかった公判期日に裁判官が出席していた場合、その後の期日で裁判官が交代した際に刑事訴訟法315条に基づく「公判手続の更新」が必要となるか。同条にいう「開廷後」の意義が問題となる。
規範
刑事訴訟法315条の「開廷後」とは、単に法廷が開かれたことではなく、公判手続すなわち事件の審理手続が開始されたことを意味すると解すべきである。これは、同条が口頭弁論主義に基づく直接主義の要請から、実際に審理に関与した裁判官が判決を下すことを担保する趣旨だからである。
重要事実
第一審の第1回公判期日には高橋裁判官が列席したが、被告人が不出頭であったため、公判手続(審理)は行われなかった。続く第2回公判期日では山本裁判官が審理を担当したが、裁判官の交代に伴う公判手続の更新(刑訴法315条)は行われないまま審理が進められた。
あてはめ
本件では、第1回公判期日は設けられたものの、被告人の不出頭により具体的な事件審理の手続は一切なされていない。刑訴法315条の趣旨は直接審理主義にあるところ、審理が開始されていない以上、後の裁判官が更新手続を行わずに審理を進めても、直接主義を害することはない。したがって、実質的な審理が始まっていない第1回期日後に裁判官が交代しても、更新手続を行う必要はないといえる。
結論
第1回公判で審理が開始されなかった以上、第2回公判で裁判官が交代していても公判手続の更新を欠いた違法はない。
実務上の射程
裁判官交代時の更新手続(刑訴法315条、刑訴規則213条)の要否に関する基礎的な判例である。実務上、冒頭手続(人定質問等)すら行われていない段階での交代であれば、本判決の理論により更新は不要とされる。ただし、冒頭手続以降であれば、たとえ証拠調べ前であっても原則として更新が必要になる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和27(あ)6165 / 裁判年月日: 昭和28年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が交代した後に従前の裁判官が復帰して公判に関与する場合、中間の公判期日が単なる期日変更手続に過ぎないときは、刑事訴訟法315条の弁論の更新を要しない。 第1 事案の概要:第一審の第1回公判に出廷した裁判官が、第2回公判においては別の裁判官に代わっていたが、第2回公判では単に期日の変更手続がな…