被告人が死亡している旨の届出があつたのにかゝわらず、被告人の上告を棄却する判決をしたときには、これを訂正して公訴を棄却すべきである。
判決を訂正した一事例。
刑訴法339条1項3号,刑訴法415条1項
判旨
上告審において判決の言渡し前に被告人が死亡していたことが判明した場合、裁判所は、判決訂正の手続により上告棄却の判決を公訴棄却の判決へと訂正すべきである。
問題の所在(論点)
被告人が判決言渡し前に死亡していた場合に、既に言い渡された上告棄却判決をどのように是正すべきか。判決訂正の手続(刑事訴訟法416条)により公訴棄却へと訂正できるかが問題となる。
規範
上告審において判決を言い渡したが、その言渡し前に被告人が死亡していたことが事後的に判明した場合、刑事訴訟法416条に基づく判決訂正の手続により、実体的な上告棄却判決を形式的な公訴棄却判決へと訂正する。この際、同法414条、404条、339条1項3号の規定を援用し、公訴棄却の決定ではなく、言渡された判決の主文及び理由を訂正する形で行う。
重要事実
被告人は麻薬取締法違反被告事件により上告中であったが、最高裁判所が昭和28年2月24日に上告棄却の判決を言い渡した。しかし、実際には被告人はその判決言渡しに先立つ昭和27年3月5日に既に死亡していたことが、弁護人から提出された戸籍抄本等により事後的に判明した。そのため、弁護人は同判決に対して判決訂正の申立てを行った。
事件番号: 昭和27(す)502 / 裁判年月日: 昭和28年1月21日 / 結論: 棄却
たゞ被告人の住居の表示の訂正を求めるだけであつて、当裁判所の前示裁判の内容に誤のあることを理由とするものでないときは刑訴四一五条一項の用件を欠く。
あてはめ
本件において、被告人が昭和27年3月に死亡していることは、市長認証の戸籍抄本等により明らかである。本来、被告人が死亡したときは刑事訴訟法339条1項3号に基づき公訴棄却の決定をなすべきであるが、既に上告棄却の判決が言い渡されているため、同法416条の判決訂正手続を用いる必要がある。判決の主文中の「本件上告を棄却する」との部分を「本件公訴を棄却する」と訂正し、関連する理由部分等の記載を削除または修正することが相当である。
結論
被告人が死亡しているため、判決訂正の手続により、先に言い渡した上告棄却判決を公訴棄却の判決へと訂正する。
実務上の射程
上告審における被告人死亡時の処理を示す。通常は公訴棄却の決定(339条1項3号)で終了するが、死亡の事実を看過して判決を言い渡してしまった場合の救済・是正手段として「判決訂正(416条)」が実務上機能することを明示した事例である。答案上は、判決確定前の当事者死亡という手続違反の解消方法として位置づけられる。
事件番号: 昭和38(み)32 / 裁判年月日: 昭和38年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法417条1項に基づく判決訂正の申立において、上告棄却の判決に誤りがあるとは認められない場合には、申立を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人A(爆発物取締罰則違反、殺人等)および被告人B(脅迫、殺人幇助等)に対し、最高裁判所は昭和38年10月17日に上告棄却の判決を言い渡した。これ…
事件番号: 昭和35(み)10 / 裁判年月日: 昭和35年4月15日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人が上告判決前に死亡していたことが判明した場合、刑事訴訟法416条に基づき、既に言い渡した上告棄却判決を公訴棄却へと訂正すべきである。 第1 事案の概要:被告人Aに対し、最高裁判所第二小法廷は昭和35年3月25日に上告棄却の判決を言い渡し、訴訟費用の負担を命じた。しかし、後の調査(戸籍抄本)に…
事件番号: 昭和38(み)30 / 裁判年月日: 昭和38年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法415条に基づく判決訂正の申立てにおいて、判決に訂正すべき事由が認められない場合には、同法417条1項に基づき申立てを棄却すべきである。 第1 事案の概要:爆発物取締罰則違反、殺人、業務妨害等の各罪に問われた被告事件について、最高裁判所が昭和38年10月17日に上告棄却の判決を宣告した。…
事件番号: 昭和26(み)4 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避の申立ては、申立理由が不適法であるか、または忌避の原因となるべき事実の具体的疎明がない場合には、直ちに棄却されるべきである。 第1 事案の概要:本件は、裁判官の忌避を申し立てた事件であるが、提供された判決文には、申立人が主張した具体的な忌避事由の内容や、下級審の判断過程、事件の背景とな…