判旨
被告人が上告判決前に死亡していたことが判明した場合、刑事訴訟法416条に基づき、既に言い渡した上告棄却判決を公訴棄却へと訂正すべきである。
問題の所在(論点)
上告判決の言い渡し以前に被告人が死亡していたことが判明した場合、裁判所はどのような手続によって事件を終結させるべきか。刑事訴訟法416条の判決訂正の対象となるかが問題となる。
規範
上告裁判所は、その判決の内容に誤りがあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立てにより、判決を訂正することができる(刑事訴訟法416条1項)。被告人が死亡している場合には、本来公訴を棄却すべきである(同法414条、404条、339条1項3号)ことから、死亡後に言い渡された判決に誤りがあるとして、判決の訂正の手続により公訴棄却の判決へと更正する。
重要事実
被告人Aに対し、最高裁判所第二小法廷は昭和35年3月25日に上告棄却の判決を言い渡し、訴訟費用の負担を命じた。しかし、後の調査(戸籍抄本)により、被告人Aは当該判決が言い渡される以前の昭和32年7月23日に既に死亡していたことが判明した。これを受けて、検察官が判決訂正の申立てを行った。
あてはめ
本件では、被告人Aが昭和32年7月23日に死亡している。それにもかかわらず、最高裁判所が昭和35年に上告を棄却する判決を下したことは、刑事訴訟法上、被告人が死亡したときに下すべき公訴棄却の判断(339条1項3号等)を誤ったものといえる。したがって、416条の規定に従い、上告棄却の主文を「本件公訴を棄却する」と訂正し、死亡した被告人に課した訴訟費用の負担部分及び判決理由を削除すべきである。
結論
被告人が上告判決前に死亡していたときは、判決訂正の手続により、上告棄却判決を公訴棄却判決へと訂正する。
事件番号: 昭和28(み)6 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: その他
被告人が死亡している旨の届出があつたのにかゝわらず、被告人の上告を棄却する判決をしたときには、これを訂正して公訴を棄却すべきである。
実務上の射程
判決訂正(416条)の具体的な活用事例である。被告人死亡という形式的訴訟条件の欠如を見逃して実体的な判断(または上告棄却判決)をした場合、判決の内容に誤りがあるとして、既に行われた判決を訂正できることを示している。
事件番号: 昭和28(す)223 / 裁判年月日: 昭和30年7月18日 / 結論: 棄却
最高裁判所が刑訴第四一四条、第三八六条第一項三号により上告棄却の決定をしたのち、三日の異義申立期間経過後に、弁護人から右決定前に被告人が死亡していたことを理由として公訴棄却の決定を求める旨の申立をしても、右申立は不適法として棄却する外はない。
事件番号: 昭和30(す)73 / 裁判年月日: 昭和30年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法414条・386条1項3号に基づき上告を棄却した最高裁判所の決定に対しては、同法414条・386条2項による異議の申立ては認められるが、判決の訂正の申立てをすることは許されない。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所が刑事訴訟法414条、386条1項3号に基づき下した上告棄却の決定に対…
事件番号: 昭和26(す)312 / 裁判年月日: 昭和26年9月13日 / 結論: 棄却
然し当裁判所のした上告棄却の決定に対する本件訂正申立はただ被告人の本籍地の表示の訂正を求めるだけであつて、当裁判所の前示裁判の内容に誤のあることを理由とするものでなく、従つて、刑訴四一五条一項の要件を欠くから同四一七条一項に従いこれを棄却する。