判旨
憲法37条1項の「公平な裁判所」とは構成等に偏頗の惧れがない裁判所を指し、裁判官が外部の圧迫等に屈せず良識に従う限り、必要性のない証拠調べ請求の却下は違憲ではない。
問題の所在(論点)
裁判官による証拠調べ請求の却下や、特定の裁判部による審理が、憲法37条1項の「公平な裁判所」、同条2項の証人喚問権、および憲法76条3項の裁判官の「良心」に従う義務に違反するか。
規範
1.憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、裁判所の構成その他において偏頗の惧れのない裁判所をいう。2.憲法37条2項は、裁判所が必要でないと認める証人まで喚問することを義務付けるものではない。3.憲法76条3項の「良心」とは、有形無形の外部の圧迫または誘惑に屈せず、自己内心の良識と道徳感に従うことをいう。
重要事実
被告人が、名古屋高等裁判所の特定の裁判官らによって構成された裁判部に対し、偏頗の惧れがあるとして裁判官忌避の申立てを行った。また、当該裁判所が被告人の証拠調べ請求を却下したこと、および審判が裁判官の良心に反してなされたこと等を理由に、憲法37条1項、2項および76条3項に違反すると主張して特別抗告を提起した。
あてはめ
1.本件裁判部の構成において、直ちに偏頗の惧れがあると認めるべき資料は存在しない。2.証拠調べ請求の却下についても、裁判所が事件の判断に必要ないと認めた以上、証人喚問権を侵害したとはいえない。3.裁判官が外部からの圧迫や誘惑に屈したという事実はなく、裁判官としての良識に従って審理が行われたと解されるため、憲法76条3項違反も認められない。
結論
本件裁判所が公正を欠く裁判をするおそれがあるとは認められず、証拠却下等の手続も適法である。したがって、忌避申立却下決定を維持した原決定に憲法違反はなく、本件抗告は棄却される。
事件番号: 昭和43(し)102 / 裁判年月日: 昭和43年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官について不公平な裁判をするおそれがあるとは認められないとした原決定の判断に違法はない。したがって、不公平な裁判官を忌避できなかったとする憲法37条1項違反の主張は前提を欠き、抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:被告人が、担当の3名の裁判官について「不公平な裁判をするおそれがある」として…
実務上の射程
刑事訴訟における裁判官の忌避や証拠採用の裁量、および裁判官の職権行使の独立性に関する憲法適合性を判断する際の基礎的規範として用いられる。特に「公平な裁判所」の定義や「良心」の解釈を示す先例として重要である。
事件番号: 昭和47(し)78 / 裁判年月日: 昭和47年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が不公平な裁判をするおそれがあるとは認められない場合、刑事訴訟法24条1項に基づく忌避の申立ては却下されるべきである。本決定は、具体的な記録に照らし、憲法37条1項等の違反がないことを確認したものである。 第1 事案の概要:申立人は、背任被告事件の担当裁判長である金子裁判長に対し、不公平な裁…
事件番号: 昭和47(ク)216 / 裁判年月日: 昭和47年9月7日 / 結論: 棄却
忌避を申し立てられた裁判官が退官したことを理由とし、忌避申立を利益がないとして却下した決定は、申立の実質的理由につき判断を示さなかつたからといつて、憲法三二条に違反するものではない。
事件番号: 昭和43(し)19 / 裁判年月日: 昭和43年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】忌避申立事件の原審裁判所が、特定の部(民事部等)によって構成されていること自体は、直ちに不適法となるものではない。 第1 事案の概要:抗告人は裁判官に対する忌避申立を行ったが、これに対する異議申立を棄却した原裁判所が名古屋高等裁判所の民事第三部であった。抗告人は、刑事事件に関連する手続(忌避)にお…
事件番号: 昭和38(し)33 / 裁判年月日: 昭和39年3月12日 / 結論: 棄却
刑訴法第二二条は、憲法第三七条第一項に違反しない。