裁判所の所管公文書毀棄の犯罪事実が当該裁判所に起訴審理されたからといつて、その一事をもつて直ちに刑訴一七条一項各号の事由があるものということはできない。
刑訴一七条一項各号に当らない事例
刑訴法17条,刑訴法433条
判旨
裁判所の所管する公文書を毀棄したという犯罪事実が、当該裁判所において起訴・審理されたとしても、その一事のみをもって直ちに刑事訴訟法17条1項各号の管轄移転事由があるとはいえない。
問題の所在(論点)
裁判所自身の公文書が毀棄された事件において、当該裁判所が審理を行うことが、刑事訴訟法17条1項各号(特に同項2号の裁判の公平を維持しがたいおそれ)に該当するか。
規範
刑事訴訟法17条1項2号の「裁判の公平を維持することが困難であるおそれ」がある場合とは、管轄裁判所の構成、審判の状況、地域的感情等の客観的事状により、公平な裁判が期待できない具体的・客観的な状況が存在することをいう。
重要事実
被告人が、ある裁判所が所管する公文書を毀棄したという公文書毀棄被告事件について、当該裁判所に起訴された。被告人は、当該裁判所が被害当事者であることを理由に、刑事訴訟法17条1項に基づき管轄移転の請求を行ったが、原決定はこれを棄却した。被告人は、憲法37条1項(公平な裁判所の裁判を受ける権利)違反を主張して特別抗告を行った。
事件番号: 昭和35(し)43 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は、法律に定められた裁判所によって裁判を受ける権利を保障するものであり、特定の具体的裁判所で裁判を受ける権利までを保障するものではない。したがって、裁判の公平を維持し難いおそれがある場合に管轄を移転させることは、憲法31条、32条、37条1項、76条3項に反しない。 第1 事案の概要:被…
あてはめ
本件では、毀棄された公文書を所管していた裁判所が審理を行うという事実が存在する。しかし、裁判所が被害対象の関係者であるという一事をもって、直ちに裁判官が不公平な裁判をする、あるいは客観的に裁判の公平が妨げられる状況にあるとは断定できない。被告人が主張する事由は、同条項が定める管轄移転の具体的要件に該当する事状を基礎付けるものではないと解される。
結論
裁判所の所管公文書毀棄事件が当該裁判所で審理されることのみをもって、管轄移転事由(刑訴法17条1項各号)があるということはできない。
実務上の射程
管轄移転のハードルは極めて高く、単に裁判所や裁判官が事件と一定の組織的・場所的関係があるという抽象的な事情だけでは足りないことを示している。答案上は、忌避(刑訴法21条)との対比や、裁判の公平性の客観的担保の限界を論じる際の参照となる。
事件番号: 平成8(し)6 / 裁判年月日: 平成8年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法17条1項2号に基づく管轄移転請求について、憲法37条の公平な裁判所の保障との関係で、原判断が同条項所定の事由に当たらないとした判断を正当として抗告を棄却した。 第1 事案の概要:本件は、被告人が刑事訴訟法17条1項2号に基づき、管轄移転の請求を行った事案である。被告人側は、地方の状況等…
事件番号: 昭和61(し)8 / 裁判年月日: 昭和61年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法17条1項2号に基づく管轄移転が認められるためには、単に裁判の公正を害する恐れがあるという主張のみでは足りず、具体的状況に照らして同条項の事由に該当すると認められる必要がある。 第1 事案の概要:本件は、被告人側が刑事訴訟法17条1項2号に基づき管轄移転の請求を行った事案である。被告人側…
事件番号: 昭和46(し)47 / 裁判年月日: 昭和46年7月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所の職員が請求者と通じていたという事実が認められない場合、適正手続違反等を理由とする特別抗告は前提を欠き、実質的な法令違反の主張は適法な抗告理由とならない。 第1 事案の概要:申立人は、損害賠償の請求者と越谷簡易裁判所の職員が通じていたと主張し、憲法31条および37条違反を理由として特別抗告を…