管轄移転請求棄却決定に対する特別抗告において,憲法37条違反の主張が欠前提処理された事例
憲法37条,刑訴法17条,刑訴法433条
判旨
刑事訴訟法17条1項2号に基づく管轄移転請求について、憲法37条の公平な裁判所の保障との関係で、原判断が同条項所定の事由に当たらないとした判断を正当として抗告を棄却した。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法17条1項2号所定の「裁判の公平を維持することが困難な虞があるとき」の意義、および同条による管轄移転を否定することが憲法37条(公平な裁判所の保障)に抵触するか否かが問題となる。
規範
刑事訴訟法17条1項2号は、「人心の動揺、風俗の状態その他の地方の状況により裁判の公平を維持することが困難な虞があるとき」に管轄移転を認めるが、本規定は憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」による裁判を担保するためのものである。本条の適用にあたっては、具体的・客観的事実に基づき、当該裁判所において公正な裁判が期待できない程度の「虞」が認められる必要がある。
重要事実
本件は、被告人が刑事訴訟法17条1項2号に基づき、管轄移転の請求を行った事案である。被告人側は、地方の状況等に照らして裁判の公平が維持できないとして憲法37条違反をも主張したが、原審はこれを認めなかった。本決定文からは、被告人の具体的な罪名や、どのような「地方の状況」が裁判の公平を妨げると主張されたのか等の詳細な事実は不明である。
あてはめ
最高裁は、本件の管轄移転請求の理由が刑事訴訟法17条1項2号所定の事由に当たらないとした原判断を正当と認めた。具体的なあてはめの詳細は判決文からは不明であるが、被告人が主張した憲法37条違反(公平な裁判を受ける権利の侵害)についても、原判断に誤りがないことを前提として、抗告理由には当たらないと判示している。これは、当該地方の状況が、裁判官の独立や不偏不党性を実質的に害するほどの客観的な危険性に達していないと判断されたものと解される。
事件番号: 昭和28(し)2 / 裁判年月日: 昭和28年12月19日 / 結論: 棄却
裁判所の所管公文書毀棄の犯罪事実が当該裁判所に起訴審理されたからといつて、その一事をもつて直ちに刑訴一七条一項各号の事由があるものということはできない。
結論
本件管轄移転請求の理由が刑訴法17条1項2号所定の事由に当たらないとした原判断は正当であり、憲法37条違反の主張も前提を欠くため、抗告は棄却される。
実務上の射程
管轄移転の要件(刑訴法17条)は極めて厳格に解されており、単なる地域住民の関心の高さや一般的な偏見の存在だけでは足りない。答案上は、憲法37条の趣旨を引用しつつ、裁判の公平を害する「具体的・客観的な支障」の有無を検討する際の指標となる。ただし、本決定自体は判文が短いため、具体的な判断基準の抽出というよりは、管轄移転が認められることのハードルの高さを示す実務上の例証として機能する。
事件番号: 昭和35(し)43 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は、法律に定められた裁判所によって裁判を受ける権利を保障するものであり、特定の具体的裁判所で裁判を受ける権利までを保障するものではない。したがって、裁判の公平を維持し難いおそれがある場合に管轄を移転させることは、憲法31条、32条、37条1項、76条3項に反しない。 第1 事案の概要:被…
事件番号: 昭和61(し)8 / 裁判年月日: 昭和61年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法17条1項2号に基づく管轄移転が認められるためには、単に裁判の公正を害する恐れがあるという主張のみでは足りず、具体的状況に照らして同条項の事由に該当すると認められる必要がある。 第1 事案の概要:本件は、被告人側が刑事訴訟法17条1項2号に基づき管轄移転の請求を行った事案である。被告人側…