上訴審において原判決を破棄し自判する場合においては、その自判する時を標準として少年法五二条を適用すべきや否やを決すべきであるが(昭和二六年(あ)第一二四一号同年八月一七日第二小法廷判決、集五巻九号参照)控訴審が控訴を理由ないものとして棄却する場合においては、第一審判決時を基準として被告人に少年法を適用するか否かを決すべきものと解するを相当とする(昭和二六年(あ)第三一一五号同二八年一月二七日第三小法廷判決参照)から原判決には所論判例違反並びに法令の適用を誤つた違法はない。
控訴審において控訴を棄却する場合には如何なる時期を標準として少年法第五二条の適用の適否を判断すべきか
刑訴法396条,刑訴法380条,少年法52条
判旨
控訴審が控訴を棄却する場合、少年法52条(不定期刑)の適用の有無を判断する基準時は、第一審判決時である。一方、上訴審が原判決を破棄して自判する場合には、その自判時を基準として少年に該当するかを判断すべきである。
問題の所在(論点)
控訴審が第一審判決を支持して控訴棄却の判決を下す際、不定期刑を定めた少年法52条の適用対象である「少年」か否かを判断すべき基準時はいつか。
規範
少年法52条の適用の有無を判断する基準時は、上訴審が原判決を破棄して自ら判決(自判)を行う場合には「自判の時点」であるが、控訴審が控訴を理由なしとして棄却する場合には「第一審判決の時点」である。
重要事実
被告人が犯行時または第一審判決時に少年であった事案において、控訴審の判決時までに被告人が成人(当時の法制における年齢基準)に達した。控訴審は、第一審判決を妥当として控訴を棄却したが、弁護人は、控訴審時点での年齢を基準に少年法を適用すべきである(またはその逆の文脈で法令適用に誤りがある)と主張して上告した。
あてはめ
上訴審において原判決を破棄して自ら判決を言い渡す場合は、その判決時において少年の更生可能性に応じた不定期刑を科す意義があるため、自判時を基準とする。しかし、本件のように控訴審が第一審判決に誤りがないとして控訴を棄却する場合、控訴審の役割は第一審判決の当否を審査することにある。したがって、第一審判決がなされた時点において被告人が少年であり、同条を適用した(あるいは適用しなかった)判断が正しかったかを判断すべきであるから、第一審判決時を基準とするのが相当である。
結論
控訴棄却の場合には第一審判決時を基準とすべきであるため、原判決に判例違反や法令適用の違法はない。
実務上の射程
本判決は、刑事訴訟法上の事後審的性格を有する控訴審における、少年法適用の基準時を明確にしたものである。答案上は、審級による基準時の違い(自判か棄却か)を整理し、少年法の趣旨(保護主義)と事後審の構造を調和させる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和38(あ)2840 / 裁判年月日: 昭和39年3月9日 / 結論: 棄却
少年法第五二条にいわゆる少年とは事実審裁判所の判決時における少年を指すものであるところ、刑訴法による控訴審は事後審であるから、控訴を理由ないものと認めて棄却する場合には、第一審判決時を基準として、被告人に少年法第五二条を適用するか否かを決すべきであつて、控訴審の判決時に少年であるか否かを問うべきでないと解するのを相当と…
事件番号: 昭和36(あ)1015 / 裁判年月日: 昭和36年7月28日 / 結論: 棄却
所論は原審の訴訟手続が少年法第五〇条に違反し違法であることを前提として違憲をいうが、少年法第五〇条は訓示規定であつて、同条の規定に違反するところがあつてもこれを以て違法といえことはできないことは既に当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第一二二六号、同年一二月八日第一小法廷判決、集三巻一二号一九一五頁、昭和二五年(れ)第一八…