判旨
税関吏の告発は訴訟条件であるが、記録上告発状の編綴や領置調書がない場合であっても、前審での証拠調べ等の経緯から適法な告発の存在が認められるときは、訴訟手続の違法とはならない。
問題の所在(論点)
記録上、告発書が編綴されていない場合に、税関吏による適法な告発(訴訟条件)が存在したと認めることができるか。
規範
関税法違反等の罪において、税関吏の告発は公訴提起の要件(訴訟条件)となる。もっとも、告発の存在は記録の全体から客観的に判断されるべきものであり、現に記録に告発書が編綴されていない等の形式的不備があったとしても、公判手続の経過等に照らし実質的に適法な告発があったと認められる場合には、訴訟条件は具備されているものと解する。
重要事実
被告人らは関税法違反等の罪で起訴された。本件記録には税関吏による告発書が編綴されておらず、これに関する領置調書も存在しなかった。しかし、差戻前の第一審公判において、検察官の請求により当該告発書の証拠調べが実施され、判決でも証拠として挙示されていた。その後、第一次控訴審において当該告発書の証拠能力の欠如を理由に破棄差戻しがなされた経緯があった。
あてはめ
本件では、記録に告発書が編綴されていないものの、差戻前の第一審公判において検察官が告発書の証拠調べを請求し、実際に裁判所がこれを取り調べている。このような公判手続の経過を考慮すれば、形式的な書類の綴じ込みが欠けているとしても、税関吏から検察官に対し適法な告発がなされていた事実は十分に認められる。したがって、訴訟条件が欠けているとはいえない。
結論
適法な税関吏の告発が存したものと認められ、公訴提起の手続に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
訴訟条件(親告罪の告訴や特例法上の告発)の存在確認において、形式的な書面の有無のみならず、記録全体や過去の公判経過からその存在を認定しうることを示した事例。実務上は、書面の不備があっても、手続の連続性からその存在を推認できる場合に応用できる。
事件番号: 昭和27(れ)30 / 裁判年月日: 昭和29年4月28日 / 結論: 棄却
一 公判調書がすべて紛失して存在しない場合には、上告裁判所は自ら旧刑訴第四三五条によつて事実の取調をした上で、公判期日における訴訟手続が適法に行われたか否かを認定することができる。 二 公判調書紛失のため、公判調書以外の資料により公判期日における訴訟手続がすべて適法に行われたことが認められた場合には、その紛失した公判調…
事件番号: 昭和26(あ)2751 / 裁判年月日: 昭和28年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法違反等に係る告発において、告発状に告発事由の明示を欠いたとしても、告発書の記載自体によって具体的条項による告発であることが窺えるのであれば、当該告発は適法である。 第1 事案の概要:被告人が関税法違反(密輸出)の罪に問われた事案において、検察官に提出された大蔵事務官名義の告発書には、具体的な…
事件番号: 昭和30(あ)3753 / 裁判年月日: 昭和31年6月14日 / 結論: 棄却
所論告発書の証拠調については第一審において所論のごとく弁護人が不同意を唱えた形跡が認められないばかりでなく、同告発書は、本件についての訴訟要件としての告発があつた事実を証明する資料であつて、本件事実認定の証拠として提出されたものでないこと記録上明白であるから、仮りに被告人、弁護人から不同意の申立があつたとしても、記録に…