一 刑法第四五条前段の併合罪の関係にあるものとして、(一)関税逋脱、(二)(1)(2)密輸入品運搬、(三)関税逋脱未遂の罪が認定せられ、同第四七条第一〇条により右(一)の罪を犯情の最も重いものとしてこれに所定の加重をして処断せられたのに対し、右(二)(1)(2)をもつて関税逋脱または密輸入の罪にあたると主張する上告論旨は、被告人にとつて不利益な主張をなすものであつて、上告適法の理由とならない。 二 台湾製パイン・アツプル罐詰は関税定率法別表輸入税表番号三〇一の一にあたり、これによつて輸入税が課せられる。
一 被告人に不利益な主張であつて、上告理由とすることの許されない事例 二 台湾製パイン・アツプル罐詰の輸入税率
旧関税法75条1項,旧関税法75条2項,旧関税法76条ノ2第1項,刑訴法405条,刑訴法407条,刑訴法402条,刑訴法351条,関税定率法別表輸入税表番号301の1甲,関税定率法別表輸入税表番号301の2甲
判旨
税法違反事件における告発は、訴訟条件にすぎず処罰要件ではないため、判決の有罪理由において告発の事実につき証拠説明をする必要はない。
問題の所在(論点)
税法違反事件における税関長等の告発は、判決書において証拠説明を要する「処罰要件」にあたるか、それとも単なる「訴訟条件」にすぎないか。
規範
税法違反事件における告発は、当該事件の訴追を可能にする「訴訟条件」に止まり、犯罪の成立そのものを基礎付ける「処罰要件」ではない。したがって、有罪判決の構成において、犯罪事実を認定するための証拠説明と同様の方式で告発の事実を詳述する必要はない。
重要事実
被告人は関税逋脱、密輸入品運搬、および関税逋脱未遂の罪に問われた。第一審判決は被告人をこれら併合罪として処断したが、判決書の証拠の標目中に告発書が掲げられていなかった。被告人側は、税法違反事件において不可欠な告発の存在が証拠説明されていない点は違法であると主張して上告した。なお、記録上、本件犯罪事実につき適法な告発があり、告発書についても適法な証拠調べが行われていた事実は認められた。
あてはめ
本件における告発は、関税法違反等の罪について公訴を提起するための手続的要件、すなわち訴訟条件としての性質を有する。実体的な犯罪成立要件(処罰要件)ではない以上、裁判所が有罪判決を下すに際して、犯罪事実の存在を裏付ける証拠と同等に、判決書の中で告発の有無について具体的な証拠説明を行う義務はない。本件では記録上、適法な告発および証拠調べがなされていたことが明らかなので、証拠の標目に告発書がないことをもって判決を違法とすることはできない。
結論
税法違反事件の告発は訴訟条件であり、判決書で証拠説明を要しない。したがって、第一審の判断を是認した原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の訴訟条件(親告罪の告訴や本件の告発)一般の性質を確認する際に引用可能。答案上は、訴訟条件の欠如が公訴棄却判決(刑訴法338条4号)を導くことの裏返しとして、判決書(刑訴法335条1項)における証拠説明の対象(罪となるべき事実を証明すべき証拠)には含まれないことを論じる際に用いる。
事件番号: 昭和30(あ)3753 / 裁判年月日: 昭和31年6月14日 / 結論: 棄却
所論告発書の証拠調については第一審において所論のごとく弁護人が不同意を唱えた形跡が認められないばかりでなく、同告発書は、本件についての訴訟要件としての告発があつた事実を証明する資料であつて、本件事実認定の証拠として提出されたものでないこと記録上明白であるから、仮りに被告人、弁護人から不同意の申立があつたとしても、記録に…
事件番号: 昭和34(あ)1049 / 裁判年月日: 昭和35年12月23日 / 結論: 棄却
司法警察職員および検察官は、当該官吏の告発をまつて論ずべき国税犯則事件につき、その告発前においても強制捜査をすることができる。
事件番号: 昭和36(あ)2714 / 裁判年月日: 昭和38年3月19日 / 結論: 棄却
一 合衆国軍隊の構成員等以外の者が、「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律」第六条の規定の適用を受けた物品である自動車を日本国内において譲り受けようとするときは(同法第一二条第一項の適用を受ける譲受)、昭和三三年法律第六八号による改正前においても、旧物…
事件番号: 昭和26(あ)2751 / 裁判年月日: 昭和28年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法違反等に係る告発において、告発状に告発事由の明示を欠いたとしても、告発書の記載自体によって具体的条項による告発であることが窺えるのであれば、当該告発は適法である。 第1 事案の概要:被告人が関税法違反(密輸出)の罪に問われた事案において、検察官に提出された大蔵事務官名義の告発書には、具体的な…