司法警察職員および検察官は、当該官吏の告発をまつて論ずべき国税犯則事件につき、その告発前においても強制捜査をすることができる。
国税犯則事件につき当該官吏告発前における強制捜査の適否。
刑訴法189条2項,刑訴法191条1項,刑訴法197条1項,刑訴法239条,関税法140条1項,国税犯則取締法17条1項
判旨
国税犯則事件における税関長等の告発は訴追条件にすぎず、告発前であっても捜査機関は被疑者の逮捕、勾留、取調べ等の強制捜査を行うことができる。
問題の所在(論点)
関税法違反等の国税犯則事件において、専売局長や税関長による「告発」がなされる前に、捜査機関が被疑者を逮捕・勾留し、あるいは取調べを行うことは許されるか。告発が「捜査の条件」なのか、それとも「公訴提起の条件」にすぎないのかが問題となる。
規範
国税犯則事件における税関長等の告発は、当該罪に対する訴追条件(公訴提起の要件)にすぎない。他方、司法警察員や検察官は、犯罪があると思料するときは捜査を行うことができ、その目的を達するために必要な取調べや、法律の定めに従った強制処分を行う権限を有する。したがって、訴追条件たる告発がなされる前であっても、捜査の必要性がある限り、逮捕、勾留、取調べを行うことは妨げられない。
重要事実
被告人らは関税法違反または物品税法違反の罪に問われた。税関長等による正式な告発がなされる前の段階において、捜査機関が被告人らを逮捕、勾留し、司法警察員や検察官による取調べが実施された。被告人側は、告発前になされたこれらの強制処分や取調べは違法であると主張して争った。
あてはめ
本件における税関長等の告発は、刑事訴訟法上の公訴提起を可能にするための訴追条件である。これに対し、司法警察員や検察官の捜査権限は、犯罪の疑いがある場合に証拠を収集し犯人を確保するために認められた独立の権限である。告発の有無は、公判段階での訴追を制約するものであっても、捜査段階における身分拘束や証拠収集の適法性に直接影響を与えるものではない。したがって、告発前に行われた逮捕、勾留、取調べについて、単に告発前であるという理由のみをもって違法とすることはできない。
結論
国税犯則事件において、税関長等の告発前に行われた逮捕、勾留、取調べは適法である。
実務上の射程
親告罪の告訴と同様、本判決は「訴追条件」と「捜査の条件」を区別する立場を鮮明にしている。実務上、告発や告訴がない段階でも捜査は可能であるが、公訴提起の見込みがないにもかかわらず強制捜査を継続することは、捜査の必要性や相当性の観点から問題となり得る点に留意すべきである。
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一 合衆国軍隊の構成員等以外の者が、「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律」第六条の規定の適用を受けた物品である自動車を日本国内において譲り受けようとするときは(同法第一二条第一項の適用を受ける譲受)、昭和三三年法律第六八号による改正前においても、旧物…
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1 訴訟条件である告発の存在は,上告審において,証拠調手続によることなく,適宜の方法で認定することができ,関税法140条所定の告発書の謄本が原判決後に原審に提出されて記録につづられ,その写しが上告審から弁護人に送付されている事情の下では,上告審は上記謄本により告発の事実を認定することができる。 2 1,2審が訴訟条件で…