所論告発書の証拠調については第一審において所論のごとく弁護人が不同意を唱えた形跡が認められないばかりでなく、同告発書は、本件についての訴訟要件としての告発があつた事実を証明する資料であつて、本件事実認定の証拠として提出されたものでないこと記録上明白であるから、仮りに被告人、弁護人から不同意の申立があつたとしても、記録に編綴することは当然であつて、これを違法とすべき理由はない。
告発書の性質
刑訴法239条,刑訴法241条,刑訴法326条
判旨
訴訟要件の存在を証明するための資料(告発書等)は、犯罪事実を認定する証拠ではないため、伝聞法則等の証拠法の適用を受けず、被告人側の同意がなくとも裁判所が記録に編綴し、その存在を確認することができる。
問題の所在(論点)
訴訟要件(本件では告発の存在)を証明するための資料について、実体事実の認定と同様の証拠法則(伝聞法則や証拠同意の手続)が適用されるか、および不同意の場合でも記録への編綴・確認が可能か。
規範
訴訟要件(起訴の有効性等)の存否を判断するための資料は、実体的な犯罪事実を認定するための証拠ではない。したがって、厳格な証明を要せず、伝聞排除法則(刑訴法320条1項)等の証拠法則の制約を受けずに、裁判所がその存在を確認する資料として取り扱うことが許容される。
重要事実
被告人の犯罪について告発がなされたが、第一審において弁護人が当該告発書の証拠調べに対し、不同意を唱えた可能性がある状況であった。しかし、裁判所は当該告発書を記録に編綴し、訴訟要件としての告発があった事実を証明する資料として扱った。弁護側は、これを違法な証拠調べであるとして上告した。
あてはめ
本件告発書は、本件における訴訟要件としての告発があった事実を証明するための資料であり、本件の犯罪事実(実体事実)を認定するための証拠として提出されたものではないことが記録上明白である。そのため、仮に被告人や弁護人から不同意の申立てがあったとしても、裁判所がこれを記録に編綴し、訴訟の前提条件を確認することは当然の適法な訴訟行為といえる。
結論
訴訟要件を証明する資料は証拠法則の制約を受けないため、弁護人の不同意にかかわらず、記録への編綴および告発の事実認定は適法である。
実務上の射程
訴訟要件(親告罪の告訴、公務員職権濫用罪の付記決定、あるいは管轄や公訴提起の有効性など)に関する資料が、実体事実の認定に流用されない限りにおいて、伝聞法則の適用外(厳格な証明を不要とする)とする実務上の根拠として活用できる。
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