判旨
関税法違反等に係る告発において、告発状に告発事由の明示を欠いたとしても、告発書の記載自体によって具体的条項による告発であることが窺えるのであれば、当該告発は適法である。
問題の所在(論点)
関税法違反等の罪について、特定の罰条(関税法93条の2但書等)に基づく告発を行う際、告発書に具体的な告発事由の明記を欠くことが、告発の有効性および公訴提起の適法性に影響を及ぼすか。
規範
特別法違反の告発(関税法に基づく告発等)において、告発状に告発事由の具体的な記載を欠いている場合であっても、書面全体の記載から告発の趣旨および対象となる罰条等が客観的に特定できる場合には、当該告発は法的に有効であると解する。
重要事実
被告人が関税法違反(密輸出)の罪に問われた事案において、検察官に提出された大蔵事務官名義の告発書には、具体的な告発事由が明示的に記載されていなかった。弁護人は、この告発書の不備を理由として訴訟手続の違法(刑訴法405条違反)を主張し上告した。なお、起訴状に添付された別表には、密輸出貨物に対する原価の記載が存在していた。
あてはめ
本件における大蔵事務官名義の告発書の記載内容を検討すると、その記載自体から関税法93条の2但書2号および3号による告発であることが十分に窺える。告発書において告発事由が文字通り「明記」されていないとしても、記載内容全体からその趣旨を合理的に把握することが可能である。したがって、形式的な不備があるとしても、実質的には告発としての要件を満たしており、違法とはいえない。
結論
本件告発は適法であり、それに基づく公訴提起も有効である。したがって、弁護人の主張は採用できず、上告を棄却する。
実務上の射程
告発の有効性が争われる場面において、形式的な不備よりも、記載内容から対象事実や適用罰条が客観的に特定可能かという実質面を重視する判断枠組みとして参照できる。特に特別法上の必要的な告発(専売法や関税法等)の有効性を論じる際の補強材料となる。
事件番号: 昭和27(あ)6853 / 裁判年月日: 昭和29年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状に記載された表現が一定の趣旨であると合理的に解釈できる場合、その解釈に従って認定された事実は、訴因以外の事実について審理したものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人が関税法違反等で起訴された際、起訴状には「右物品を陸揚と共に税関の免許を受けないで神戸市内に搬入し」との記載があった。第一審…