判旨
行為後に施行された改正法令を適用して処罰することは、憲法39条前段及び刑法6条に抵触する遡及処罰に当たり、著しく正義に反する法令適用の違法となる。
問題の所在(論点)
行為時に存在しなかった改正後の罰則規定を、改正前の行為に適用して処罰すること(遡及処罰)の可否、及びそれが刑事訴訟法411条1号の破棄事由に該当するか。
規範
刑罰法規の適用は、原則として行為時の法律によらなければならない。行為後に制定又は改正された法令を、その施行前の行為に適用して処罰することは、遡及処罰禁止の原則に反し許されない。ただし、行為時の法律によれば犯罪を構成し得る場合であっても、裁判所が事後法令を適用したときは、法令適用の誤りとして破棄の対象となる。
重要事実
被告人は昭和22年8月頃、Aから借家権利金として1万5000円を受領した。第一審判決は、この事実に対し、昭和23年10月9日に施行された政令第320号による改正後の地代家賃統制令12条の2、18条1項3号を適用して有罪とした。原審もこれを是認したため、被告人が上告した。
あてはめ
本件犯罪事実は昭和22年8月の行為であるが、第一審が適用した地代家賃統制令の改正規定は昭和23年10月施行のものである。これは「事後法令を適用した違法」があるといえる。仮に行為時の改正前法令(同令11条)違反の罪が成立する余地があったとしても、直接的に事後法令を適用して処断することは、法の不遡及の原則に照らし、著しく正義に反する法令適用の誤り(刑訴法411条1号)に該当する。
結論
事後法令を適用して処罰した原判決及び第一審判決の有罪部分は違法であり、破棄を免れない。行為時法による罪の成否を審理させるため、第一審に差し戻すべきである。
実務上の射程
憲法39条が禁止する遡及処罰禁止の原則を刑事訴訟手続において具現化した判例である。答案上は、法令の改廃があった場合の適用関係(刑法6条の原則と例外)や、職権調査による法令適用誤りの指摘において、遡及処罰の禁止を論拠とする際に活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5698 / 裁判年月日: 昭和29年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】一定の期間継続して家賃を受領し続けた行為について、家賃を一回受領するごとに一罪が成立するのではなく、包括して一罪として起訴・審判することは適法である。 第1 事案の概要:被告人が家賃を受領した行為について、検察官は個別の受領行為ごとに起訴したのではなく、一連の行為を包括して起訴した。これに対し弁護…