判旨
控訴趣意書が法定の期間内に提出されなかったことを理由とする控訴棄却決定に対し、旧刑訴法上の上訴権回復に関する大審院判例を引用して違憲等を主張することは、事案の性質を異にするため認められない。
問題の所在(論点)
控訴趣意書の未提出を理由とする控訴棄却決定に対し、上訴権回復に関する旧法の判例を引用して判例違反(刑訴法405条2号)を主張できるか。
規範
刑事訴訟法405条1号・2号の不服申立理由にあたると認められるためには、引用する判例が当該事案に対して適切に適用し得る性質のものでなければならない。事案の性質や手続の法的根拠が異なる場合には、判例違反の主張は正当化されない。
重要事実
抗告人は、控訴趣意書を所定の期間内に提出しなかったことを理由に控訴を棄却された。これに対し、抗告人は、旧刑事訴訟法387条の上訴権回復に関する規定について判断した大審院決定(昭和2年2月17日)を引用し、原決定が刑訴法405条1項2号の判例違反にあたると主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
抗告人が引用する大審院決定は、旧刑訴法下での上訴権回復に関する判断である。これに対し、本件は現行刑訴法下において、所定期間内に控訴趣意書の提出がなかったことを理由に控訴を棄却した事案である。両者は手続の性質や根拠規定が異なるため、引用された判例は本件事案に対して適切なものとはいえない。
結論
本件抗告は理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
判例違反を理由とする上告・抗告において、前提となる事案の類似性や法制度の同一性が重要であることを示す。制度趣旨の異なる旧法下の判例を安易に引用しても、判例違反の主張は認められない。
事件番号: 昭和25(し)61 / 裁判年月日: 昭和25年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の理由として憲法違反を主張していても、その実質が原決定の訴訟手続に関する単なる法令違反にすぎない場合には、刑罰訴訟法上の適法な特別抗告の理由とは認められない。 第1 事案の概要:特別抗告人が、原決定の訴訟手続に関する不服を憲法違反と主張して特別抗告を申し立てた事案。なお、具体的な事案の詳細…
事件番号: 昭和27(し)76 / 裁判年月日: 昭和27年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所がした上告申立棄却決定や裁判の執行に関する異議申立却下決定に対しては、当該高等裁判所に異議の申立てをすることが認められているため、最高裁判所への特別抗告をすることは許されない。 第1 事案の概要:被告人が高等裁判所に対して行った上告の申立てに対し、当該高等裁判所は、期間経過後であるとして…
事件番号: 昭和28(す)536 / 裁判年月日: 昭和28年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所がなした上告棄却の決定に対しては、抗告をすることが許されないだけでなく、これに代わる異議の申立てをすることも許されない。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所がなした上告棄却の決定(刑訴法414条、386条2項)に対し、不服として異議の申立てを行った。なお、具体的な事案の内容については…
事件番号: 昭和27(し)28 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の要件である「自己又は代理人が責任を負うことのできない事由」とは、不注意等の過失がないことを指し、弁護人の不注意により控訴期間を徒過した場合はこれに当たらない。 第1 事案の概要:被告人Aに対する窃盗被告事件の第一審判決に対し、被告人本人またはその弁護人は、法定の控訴期間内に控訴の申し立…
事件番号: 昭和25(し)64 / 裁判年月日: 昭和26年4月13日 / 結論: その他
一 そして最高裁判所が正義を維持するため発動する職権破棄権は本件のような場合には当然にこれを保有するものというべきであるから本件特別抗告については刑訴法第四一一条の準用があるものと解するのが正当である。 二 被告人(控訴申立人)に対し、保釈決定原本に記載された制限住居とまつたく異つた制限住居を記載した謄本が送達せられ、…