判旨
前に執行猶予の言渡しを受けその裁判が確定した者が、その確定後に更に罪を犯し、これに対しても執行猶予の言渡しがなされて確定した場合、後の執行猶予は刑法26条1項1号により、前の執行猶予は同項3号により、それぞれ取り消されなければならない。
問題の所在(論点)
執行猶予の裁判が確定した後に更に罪を犯し、その罪についても重ねて執行猶予の言渡しがなされて確定した場合において、刑法26条1項の必要的取消事由に該当するか。
規範
刑法45条後段の併合罪の関係に立たない二つの罪について、それぞれ個別に執行猶予の言渡しがなされ確定した場合、刑法26条1項1号(猶予の期間内に更に罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられたとき)及び同項3号(猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたとき)に基づき、各執行猶予は必要的取消しの対象となる。
重要事実
被告人は、昭和26年4月5日にたばこ専売法違反により懲役6月・執行猶予2年の判決を受け、同月20日に確定した。その後、被告人は同年10月17日に覚せい剤取締法違反の罪を犯し、同年11月13日に懲役4月・執行猶予2年の判決を受け、同月28日に確定した。つまり、第一の罪の執行猶予判決が確定した後に第二の罪を犯し、双方について執行猶予が付された状態となった。
あてはめ
本件における二つの罪は、第一の罪の裁判確定後に第二の罪が犯されているため、刑法45条後段の併合罪には当たらない。第二の罪については、第一の罪による執行猶予期間内に犯され、かつ禁錮以上の刑(懲役4月)に処せられたものであるから、刑法26条1項1号に該当する。また、第一の罪については、その猶予の言渡し前に犯した罪ではないものの、猶予の言渡し後に犯した第二の罪について禁錮以上の刑に処せられたことにより、同項3号の趣旨に基づき取消しを免れない(判旨は同条項1号及び3号により「取消されるべきことは勿論」とする)。
結論
被告人に対する二つの執行猶予の言渡しは、刑法26条1項1号及び3号に基づき、いずれも取り消されるべきである。
事件番号: 昭和27(し)26 / 裁判年月日: 昭和28年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条1項2号(現行26条1号)の「刑に処せられた」とは、執行猶予の言渡しがない場合を指す。したがって、併合罪の関係にある数罪が前後して起訴され、各判決で共に執行猶予が付された場合は、同号による取消事由には該当しない。 第1 事案の概要:被告人は、(1)昭和25年7月頃の窃盗罪により、同年9月…
実務上の射程
執行猶予中にさらに余罪(確定後犯)について執行猶予判決を得たとしても、各々の判決が確定すれば、形式的に取消事由に該当し、結果として全ての猶予が取り消され実刑に服さなければならないことを示す。司法試験においては、執行猶予の欠格事由や取消事由を整理する際の基礎知識として重要である。
事件番号: 昭和26(し)67 / 裁判年月日: 昭和33年3月17日 / 結論: その他
刑法第二六条(昭和二八年法律第一九五号による改定前のもの)二号にいう「猶予ノ言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ付禁錮以上ノ刑ニセラレタルトキ」とは、その罪につきの禁錮以上の実刑を言渡された場合を指すものであつて、刑の執行猶予の言渡があつた場合を含まない趣旨に帰着する。
事件番号: 昭和28(し)97 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条1号による執行猶予の必要的取消しは、一事不再理を定めた憲法39条等の規定に違反せず、合憲である。 第1 事案の概要:被告人は刑の執行猶予期間中にさらに罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられた。これに基づき、刑法26条1号を適用して従前の執行猶予が取り消されたが、被告人は当該取消しが憲法39条に…
事件番号: 昭和25(し)55 / 裁判年月日: 昭和26年10月6日 / 結論: 棄却
前犯に対する確定判決を動かしたり或は前犯に対し、重ねて刑罰を科する趣旨のものでもない刑法第二六条第一項第一号の規定が憲法第三九条その他の規定に違反しないことは、当裁判所昭和二四年(れ)第一二六〇号同年一二月二一日大法廷判決、昭和二四年(れ)第一四〇四号、同二五年三月一五日大法廷判決の趣旨に徴し疑をいれないところである。…
事件番号: 昭和48(し)7 / 裁判年月日: 昭和48年2月28日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予の判決に対し被告人のみが控訴し、この控訴申立期間経過後で同判決の確定前に、被告人に対する別件被告事件について禁錮刑(実刑)の裁判が確定した場合は、右刑の執行猶予の判決の確定をまつて刑法二六条三号により刑の執行猶予の言渡を取り消すことができる。