判旨
刑法26条1項2号(現行26条1号)の「刑に処せられた」とは、執行猶予の言渡しがない場合を指す。したがって、併合罪の関係にある数罪が前後して起訴され、各判決で共に執行猶予が付された場合は、同号による取消事由には該当しない。
問題の所在(論点)
刑法26条1項2号(現行26条1号。猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたとき)の必要的取消事由の意義、および併合罪の関係にある数罪について相次いで執行猶予が言い渡された場合に、先の執行猶予を取り消すべきか否か。
規範
刑法26条1項2号(現行26条1号)にいう「刑に処せられたる」とは、その刑について執行猶予の言渡しがない場合を指すと解する。併合罪の関係に立つ数罪が前後して起訴された場合において、仮にそれらが同時に審判されていたならば一括して執行猶予が言い渡されたであろうときは、後の罪についてもさらに執行猶予を言い渡すことができ、その場合に前の執行猶予が取り消されることはない。
重要事実
被告人は、(1)昭和25年7月頃の窃盗罪により、同年9月に懲役1年・執行猶予3年の判決を受けた。その後、(2)これより以前(昭和23年8月頃)に犯していた背任罪により、昭和26年3月に懲役8月・執行猶予2年の判決を受けた。記録によれば、両罪が同時に審判されていれば一括して執行猶予が付されたであろう事情が認められた。
あてはめ
本件において、被告人は第1の罪(窃盗)で執行猶予判決を受けた後に、それより前に犯した第2の罪(背任)についてさらに執行猶予判決を受けている。これらは併合罪の関係にあり、同時審判であれば一括して猶予されたといえる。この場合、第2の罪の判決は「執行猶予のない刑に処せられた」ものには当たらないため、第1の罪の執行猶予を取り消すべき事由には該当しない。原決定が同条項を適用して取り消すべきではないとした判断は、判例の趣旨に照らし正当である。
結論
被告人が執行猶予の言渡し前に犯した他の罪につき、さらに執行猶予を言い渡されたとしても、刑法26条1項2号の取消事由には該当しない。
事件番号: 昭和27(し)27 / 裁判年月日: 昭和28年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前に執行猶予の言渡しを受けその裁判が確定した者が、その確定後に更に罪を犯し、これに対しても執行猶予の言渡しがなされて確定した場合、後の執行猶予は刑法26条1項1号により、前の執行猶予は同項3号により、それぞれ取り消されなければならない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和26年4月5日にたばこ専売法…
実務上の射程
同時審判の可能性があった併合罪において、偶然別々に起訴・判決がなされたことによって、一方の執行猶予が他方の存在を理由に当然に取り消されるという不合理を回避する趣旨である。答案上は、再度の執行猶予(25条2項)や必要的取消(26条)の解釈において、実質的な処罰の妥当性を考慮する際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和26(し)67 / 裁判年月日: 昭和33年3月17日 / 結論: その他
刑法第二六条(昭和二八年法律第一九五号による改定前のもの)二号にいう「猶予ノ言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ付禁錮以上ノ刑ニセラレタルトキ」とは、その罪につきの禁錮以上の実刑を言渡された場合を指すものであつて、刑の執行猶予の言渡があつた場合を含まない趣旨に帰着する。
事件番号: 昭和26(し)47 / 裁判年月日: 昭和28年6月10日 / 結論: 棄却
一 刑訴応急措置法第一八条による特別抗告には、刑訴第四〇五条第二号第三号および第四一一条第一号は準用されない。 二 本件に適用される旧刑訴三七四条二項の規定によれば、検察官から執行猶予の言渡の取消請求があつた場合には、裁判所は、被告人又はその代理人の意見を聴き決定を為すべきものであつて、決定を為すには国選弁護人を選任し…
事件番号: 昭和26(し)76 / 裁判年月日: 昭和26年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予の取消決定が迅速を欠いたとしても、そのこと自体は決定の効力に影響を及ぼさず、憲法37条1項の「公平な裁判所の裁判」は裁判所の組織構成に関するものであって個別の事件処理の当否を指すものではない。 第1 事案の概要:抗告人は、昭和23年に窃盗罪により懲役1年・執行猶予3年の判決を受けたが、…
事件番号: 昭和28(し)97 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法26条1号による執行猶予の必要的取消しは、一事不再理を定めた憲法39条等の規定に違反せず、合憲である。 第1 事案の概要:被告人は刑の執行猶予期間中にさらに罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられた。これに基づき、刑法26条1号を適用して従前の執行猶予が取り消されたが、被告人は当該取消しが憲法39条に…