判旨
刑事訴訟法433条に基づく特別抗告は、同法により不服を申し立てることができない決定等に対してのみ許される。高等裁判所がなした上訴権回復請求棄却等の決定に対しては、本来同法428条により異議の申立てをなすべきであり、その手続を経ずに直接特別抗告をなすことはできない。
問題の所在(論点)
高等裁判所がなした上訴権回復請求棄却等の決定に対し、刑訴法428条の異議申立てを経ずに、直接刑訴法433条の特別抗告を申し立てることの可否。
規範
刑訴法433条の特別抗告は、同法により不服を申し立てることができない決定または命令に対してのみなし得る。不服申立手段として別途、即時抗告(刑訴法364条、414条等)や、控訴裁判所としての高等裁判所に対する異議の申立て(刑訴法428条)が許されている場合には、当該手続を経ることなく直接特別抗告を申し立てることはできない。
重要事実
被告人Aは、銃砲等所持禁止令違反および強盗幇助の罪に問われ、東京高等裁判所から上訴権回復請求の棄却および上告申立ての棄却という二つの決定を受けた。これに対し、抗告人は、高等裁判所に対する異議の申立て等の手続を経ることなく、最高裁判所に対し刑訴法433条に基づく特別抗告を申し立てた。また、当該申立てを仮に異議の申立てとして取り扱ったとしても、所定の申立期間を経過していた。
あてはめ
刑訴法上、高等裁判所がなした本件各決定に対しては、刑訴法364条、414条、375条等により即時抗告が許されるべき性質のものであり、刑訴法428条の規定に基づき、原決定をなした高等裁判所に対して異議の申立てをなすことができる。したがって、本件決定は「刑訴法により不服を申し立てることができない決定」には該当しない。抗告人が適法な異議申立ての手続を経ないままなした本件特別抗告は、同法433条の要件を欠く不適法なものといえる。なお、期間経過後にしかなされていない本件申立てを異議申立てとして救済することも困難である。
結論
本件特別抗告は不適法であり、棄却を免れない。
事件番号: 昭和29(し)28 / 裁判年月日: 昭和29年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上訴権回復請求を棄却した決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:抗告人は、名古屋高等裁判所が昭和29年5月21日に行った上訴権回復請求を棄却する決定に対し、最高裁判所に特別抗告を申し立てた…
実務上の射程
特別抗告の補充性(他に適法な不服申立手段がないこと)を確認した事例である。高等裁判所の決定に対しては、まず刑訴法428条に基づく異議の申立てが可能かを確認すべきであり、これを経ない特別抗告は門前払いされる実務運用を明示したものといえる。
事件番号: 昭和28(し)94 / 裁判年月日: 昭和29年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所のなした再審請求棄却決定に対しては異議の申立てが可能であるため、これに対する特別抗告は不適法である。 第1 事案の概要:福岡高等裁判所に対し再審請求がなされたが、同裁判所はその請求を棄却する決定を下した。これに対し、請求人が最高裁判所に対して特別抗告を申し立てた事案である。 第2 問題の…
事件番号: 昭和29(し)51 / 裁判年月日: 昭和29年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所がなした再審請求棄却の決定に対し、刑事訴訟法428条2項に基づく異議の申立てを経ることなく直接特別抗告を申し立てることは、同法433条により許されない。 第1 事案の概要:抗告人は、強盗致死被告事件の確定判決(福岡高等裁判所)に対し再審請求を行った。これに対し、福岡高等裁判所が再審請求を…
事件番号: 昭和53(し)101 / 裁判年月日: 昭和53年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠決定に対する異議申立てを棄却する決定は、訴訟手続に関し判決前にした決定であり、刑事訴訟法433条1項に規定する特別抗告の対象となる決定にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人が、裁判所による証拠決定(証拠採用または却下の決定)に対して異議を申し立てたところ、裁判所がその異議申立てを棄却する決…
事件番号: 昭和29(し)49 / 裁判年月日: 昭和29年9月18日 / 結論: 棄却
刑訴第四二九条による請求(いわゆる準抗告)についてした決定に対しては、高裁に抗告をすることはできない。