判旨
被告人が主張する「おとり捜査」の事実が第一審および原審で認められていない以上、それを前提とした違憲の主張は前提を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
事実認定において認められていない「おとり捜査」の存在を前提として、上告審で捜査の違法性や違憲性を争うことができるか。
規範
上告審において、第一審判決および原判決で認められていない事実(おとり捜査の存在など)を前提として憲法違反や判例違反を主張することは、前提を欠くものとして不適法となる。
重要事実
被告人側は、本件捜査が「おとり捜査」に該当し、かつ犯意もなかったと主張して、原判決には憲法違反および判例違反があると上告した。しかし、第一審および原審(二審)の判決において、本件がおとり捜査であるという事実は認定されていなかった。
あてはめ
最高裁は、弁護人が主張する「おとり捜査」や「犯意の否認」は、いずれも第一審および原判決が認めていない事実に基づく主張であり、実質的には事実誤認の主張に帰すると判断した。したがって、おとり捜査を前提とする違憲の論旨は、その前提を欠くものといえる。
結論
本件におとり捜査の事実は認められず、それを前提とした違憲・違法の主張は不適法であるとして、上告を棄却した。
実務上の射程
本判決は、おとり捜査の適法性そのものについて判断を示したものではなく、事実認定がない段階での上告理由の不適法性を指摘するにとどまる。答案作成上は、おとり捜査の違法性が争点となる場合、まず前提となる事実認定の有無を確認する手続的作法を示す材料となるが、実体的な違法性判断基準については後の最高裁判例(最決平成16年7月12日等)を参照すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)5760 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】おとり捜査によって犯罪が誘発されたとの主張は、原判決の認定事実にない限り前提を欠く。また、共同被告人間に刑の軽重の差異があっても、直ちに憲法14条の平等原則に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が、自らの所為がいわゆる「おとり捜査」によって誘発されたものであると主張し、それが憲法11条…